IBMとスタンフォード大学は26日(米国時間)、スピントロニクスの研究を共同でさらに進めていくと発表した。スピントロニクスは将来、連写可能なデジタルカメラや、電源をオンにすると同時に利用できるコンピュータなどの開発につながる分野とされている。
Spintronics Science and Application Centerという名のこの事業は、カリフォルニア州サンノゼにあるIBMのAlmaden Researchと、その近隣のパロアルトにあるスタンフォードのキャンパスを拠点として行なわれる。
スピントロニクスは薄膜から発生する磁場を精確に制御して電子を回転させる技術だ。磁場は電気抵抗を生み出すが、この抵抗の高低を0と1に割り当てることができる。研究者が薄膜のさまざまな箇所で磁場を制御し、抵抗のレベルを0と1に置き換えれば、デジタルデータを表現できるわけだ。
スピントロニクスという比喩的な名前は、電子の回転の仕方に由来している。
スピントロニクス技術は実は数年前から存在している。IBMは1997年に、こうした性質を利用した巨大磁気抵抗(GMR)技術によるディスクヘッドを製作した。
今後スピントロニクス技術が統合される分野としては、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)が考えられる。MRAMは理想的には、大容量で消費電力が少なく、従来のフラッシュメモリよりはるかに高速に処理できる上、永久的にデータを保存できるとされている。
携帯電話やデジタルカメラなどのメモリカードとして使用されているフラッシュメモリに代わる技術を見つけることは、半導体市場の企業にとって緊急の課題となっている。フラッシュの需要は現在、ものすごい勢いで急速に成長中だ。
しかしながら、フラッシュの基礎となる技術は発展が困難であることから、大手メーカーのほぼ全てが代替となる技術を吟味しているところだ。
しかし、MRAMに批判的な立場の人間や競合技術のメーカーらは、MRAMがフラッシュの後継となることはないと指摘している。MRAMは型破りのメモリなので、IBMはこれが安価に大量生産できることを示す必要がある。Intelでも、MRAMのセルが大きいため、デジタルカメラなどの小型デバイスに挿入するのが難しいと指摘している。また、抵抗の変化がごくわずか過ぎて、データが崩壊するおそれがあると主張する者もいるが、IBMはこの主張に反論している。
IBMとInfineonは昨年6月、記憶容量128キロビットのMRAMチップを180ナノメートルプロセスで製造する方法を記した論文を発表。当時両社は、MRAMについて2004年前半にはさらに詳しいデモを行うと述べ、また2005年までには商用目的の生産を開始できると予想していた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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