ITサービスの超大型契約、ふたを開けてみれば・・・

 米IBM、米Hewlett-Packard(HP)、米Electronic Data Systemsなどの企業は、数億ドル、あるいは数十億ドル規模の超大型サービス契約を受注したと自慢するのが大好きだ。

 しかし、こうした大きな金額の影には、その取引を遂行するためのコストが隠されており、しかもそれが相当の額になることもあり得る。

 たとえば、IBMは先頃、発電所や産業用プラント建設を手がけるスイス企業、ABBとの間で、今後10年間ITサービスを提供するという内容の、総額11億ドルに上る契約を締結したと大々的に発表した。

 IBMによると、同社がABBから受取る金額は、2001年末に合意された別の2件の契約からの約6億ドルと合わせ、10年間で17億ドルに達する見込みだという。しかしながら、IBMの年間収入は1.7億ドルには到底達しないだろう。契約の一環として、IBMはABBの従業員を1300人近く引き取るが、そのための人件費が年間9000万ドルを上回ると見られているからだ。

 アナリストの話では、IBMのこの契約は、大型ITサービス案件の典型的な受注例だという。サービスを提供するIT企業は、IT機器の費用や人件費として、相当の額を投資しなくてはならない。さらには、取引先が期間内に再交渉を求めてくることもあり、これに応じた場合には、利益が更に削られる可能性もあるという。

 大型案件の本当の価値は、長期的な関係の構築と、その後数年間に生じる他の契約獲得にあるのかもしれない。

 「こうした案件受注で手に入れるのは、実は顧客との関係だ」と、株式リサーチ会社American Technology ResearchのアナリストDavid Garrityはいう。

 これで、ここ数ヶ月間に数多くの大型契約の発表があったこと、そしてITサービス企業による10億ドルを超える規模の契約締結数が全体的に増えていることへの説明がつく。

 今年5月、HPは米Procter & Gamble(P&G)から、30億ドル相当の10年契約を受注したと発表した。この契約で、同社はP&GのITインフラ全体の管理を請け負うことになった。この8月には、米Computer Sciencesが、マレーシアの銀行グループMalayan Bankingから3億4200万ドルの10年契約を勝ち取り、ITアウトソーシングサービスを提供していくと大々的に発表した。

 いっぽう、IBMでも、7年間のITアウトソース契約を飲料会社のDiageoと締結したと発表。この契約に詳しいアナリストの見積もりでは、契約金額は4億ドルから5億ドルになるという。

 こうした超大型案件はふつう、最低でも数年間続くIT関連業務のアウトソーシング契約で、この契約の下、サービス提供企業はソフトウェアアプリケーションの開発やデータセンターの運営、デスクトップコンピュータの管理などの業務を代行する。昨年は、この種の大型取引の当たり年だった。リサーチ会社の米Gartner Dataquestによると、2002年には、ITインフラの管理に関する委託契約で、10億ドルを超える規模のものが、少なくとも14件あった。ちなみに、2001年の契約数は9つだった。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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