ブログ・SNS:“ITコンシュマライゼーション”というパワーシフト

栗川敦子(編集部)2007年06月12日 19時47分

 総務省の調べによると、すでにブログやSNSを開設している企業は全体で4.4%にのぼり、2000人以上の従業者規模企業にいたっては9.9%、すなわち10社に1社が開設していることになる。

 つまりは、もともとは消費者(コンシューマー)向けに開発された技術であるブログやSNSが、企業内でも活用され始めているのである。それでは、ブログやSNSが、企業活動にどのような効果をもたらしているのだろうか。

 こうした点に関する議論が、先ごろ開催された「Business Blog & SNS World 07」の中のパネルディスカッションで展開された。パネリストには、個人ブログと広告主とのマッチングを図っているアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)の徳力基彦氏と、ブログを情報共有基盤として企業を支援するリアルコムの取締役最高マーケティング責任者(Chief Marketing Office)吉田健一氏が出席している。モデレーターはCNET Japan編集長の西田隆一が務めた。

 パネルディスカッションでは、ブログの活用方法を(1)企業PRやIRの役割を担う“外向き”のブログ、(2)企業内の情報共有やコミュニケーションの活性化を促進する“イントラ”としてのブログ、(3)そして“メディア”としてのブログ――の3つに分類し、それぞれの特徴や役割を議論した。

 徳力氏は、外向きのブログについて「ブログを対社外への情報発信に活用すると、一個人が自身の言葉で読者やクライアントに直接語りかけることが可能となる。また、トラックバックやコメントなどの双方向性の機能は読み手との間にフラットな関係性を構築することができる。これは、従来の情報発信手法であったメールマガジンなどと比較した際の大きな優位点だ」と、その有効性を強調した。

 さらに徳力氏によれば、ブログは商品のプロモーションにも有効活用でき、通常の広告には載せられないような詳細情報の発信など“顧客のハートをブログでつかむ”プロモーションの成功事例も多数出てきているという。

 また同氏は、うまくいっているブログとそうでないブログの差は「いかに読者を巻き込むか」とした。米国で“やらせ”の発覚で炎上したブログも実際に存在することから、「ただ書くのではなく、“読者とのコミュニケーション”や“読者同士のコミュニケーション”を考えながら展開することが重要である」と、外向きのブログを展開するうえの留意点を明らかにしている。

 外向きのブログをうまく活用すれば、企業の活動にメリットをもたらすことは理解されてきているが、それでは、社内でのイントラとしてのブログは、企業の情報活用にどのようなメリットをもたらすのだろうか。

 吉田氏が所属するリアルコムでは、ブログを情報共有基盤として利用する際に企業を支援しているが、吉田氏は、企業内でのブログ活用の度合いについて、「コンシューマー向けに開発されたブログやSNSが企業活動に導入され始めたのはつい数年前のこと。“うまい活用”というのはまだまだ模索中の段階だ」と見ている。

 同氏は、そうした現状を認めたうえで「ブログやSNSの導入は、すでにある情報共有ツールの中にブログを埋め込んでいくといった、既存ツールとの組み合わせでマッピングすることが重要」と提言する。

 吉田氏によると、すでにmixiなどのコンシューマー向けSNSやブログに使い慣れた従業員からは、社内SNSやイントラブログが使いにくいとの声が上がっているという。

 「かつては情報システム部門がITベンダーから導入した社内システムを従業員がしぶしぶ使うという構図であった。しかし、ITコンシュマライゼーションというパワーシフトで、従業員が使いたい社内システムを情報システム部門がITベンダーに注文するという構図に変わり始め、ITベンダーにとっては、ややハードルが高くなってきている」(吉田氏)

 メディアとしてのブログについて徳力氏は、「個人ブログへの広告掲載によって、これまで効率的にリーチすることが難しかった、セグメント化されたターゲットにリーチすることが可能になる」と、そのメリットを強調している。

 また、徳力氏は、ブログというクチコミ効果については、「クチコミが重要視されているのは今も昔も変わらない。ネットを介したクチコミの優位性は、仕掛けに対してクチコミが誘発できたか否か、また、クチコミが広がる過程がすべて追跡でき可視化されている点にある」と語って、ブログがこれまでのクチコミとは違った効果をもたらすことを主張している。

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