SaaSの先駆者「Salesforce.com」が語る、Web 2.0の未来 - (page 2)

インタビュー:永井美智子(編集部) 文:吉澤亨史2006年10月16日 16時17分

--CRMサービス全体の問題として、導入したものの、社員が入力を面倒がって結局はうまく活用されないという話を聞きます。

 簡単に言ってしまえば、CRMは最初の作り方が良くなかったんだと思います。上層部向けに作られていて、末端となる社員向けではなかった。従来のCRMは、日本版SOX法などの規制対応を重視していました。企業はこのような規制にひとつひとつ対応しなければなりませんから、CRMを導入しようとします。しかし、社員にとっては必ずしも使いやすいものではなかったわけです。

 人間は、自分の生産性が向上するもの、便利になるものは積極的に使おうとします。ノートパソコンや携帯端末、携帯電話がいい例です。しかし、このような製品は使い勝手や便利さを追求していて、法規制までは考えられていません。そこで私たちは、常にエンドユーザーを意識して、使いやすさや便利さを重視したCRMを開発しています。製品を利用率で評価するという考え方は、私たちの強みでもあります。

 利用率を念頭にした場合、製品にはアマゾンと同じレベルの使いやすさが必要になります。つまり、トレーニングやマニュアルがなくても、直感的に使いこなすことができなければなりません。そのため、サービスを設計するときにはエンドユーザーにも見てもらい、インタビューをしながら何回もプロトタイプを作り直していきます。

 いろいろな立場のエンドユーザーにプロトタイプを使っていただき、スコアカードに評価を記入してもらいます。そして、ユーザビリティの項目に「A」をもらえないと出荷ができないシステムになっています。CEOではなく、エンドユーザーに評価してもらうことで、エンドユーザーもハッピーになれるサービスを提供できるわけです。Salesforce.comのホームページには、笑顔のエンドユーザーの写真が掲載されているのは、このような意味があるのです。

--日本市場については、どのような印象をお持ちですか。また、海外の市場に比べて厳しい部分はありますか。

 Salesforce.comの設立は1999年ですが、2000年には日本に進出しています。欧州よりも早かったわけです。それだけ日本市場はエキサイティングで、期待しています。おそらく他のグローバル企業も同様に考えているでしょう。難しかった点としては、2000年の導入時はインターネットインフラがまだ整っていなかったということですが、現在では世界的にも高いレベルで整備されていますし、全く問題ありません。

 また、これは米国でも同様でしたが、最初にCRMの何たるかを伝道する必要がありました。日本でもCRM認知のためにエバンジェリストを派遣し、6年間にわたって伝道に努めました。この点も現在は認知度が上がり、問題ない状況になっています。

 市場の個性としては、米国では取引を重視することに対し、日本では相手との関係を重視します。また、セールスなどは個人よりチームを組んで動くことが多いですし、コラボレーションも重視します。サービスやコンセプトも日本ならではのものがあります。つまり、オンデマンドのサービスが普及する要素が揃っているんですね。いいシステムを提供することで、しっかりした関係を構築できる市場といえます。

 実際に、ジョンソン・エンド・ジョンソン、新生銀行、キッコーマン、日立ソフト、ソフトバンク、ミシュランタイヤなど、多くの企業がSalesforce.comのサービスを活用しています。今度は、このお客様方がサービスの良さを伝道してくれると思っています。

 今後の戦略については、日本も海外も同様に、直感的な製品に注力していきたいと考えています。具体的には、製品の質に対して追求していくことです。ただ、日本は直販よりもリセラーが多いことや、お客様との関係を築きあげるまでに時間がかかるといった特徴があるので、販売の戦術については日本独自のものになると思います。これからも上層部はもちろん、エンドユーザーまで満足していただける製品を提供していきたいと考えています。

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