米国製品に替わる選択肢を模索する途上国市場

Ingrid Marson (Special to CNET News.com)2005年11月24日 10時00分

 米国や欧州以外の国々において、政府機関がオープンソースソフトウェアを採用する際の主要な動機はその低コスト性だが、必ずしもこれだけが普及を後押しする要因ではないと専門家は考えている。

 先頃、オランダのMaastricht Economic Research Institute on Innovation and Technologyでオープンソースの研究プロジェクトを率いるプログラムリーダーRishab Ghoshは、各国の1人当たりGDP(国内総生産)とソフトウェアライセンス料金の比較調査を実施した。

 同調査の結果は、ソフトウェア料金の割引きを勘案しても、途上国市場におけるプロプライエタリソフトウェアのコストは相対的購買力という意味において「莫大」であるというものだった。Amazon.comで販売されているMicrosoftのWindows XPおよびOffice XPの米国内価格は、南アフリカの1人当たりGDPの3カ月分、ベトナムの1人当たりGDPの16カ月分に相当するという。これらの金額を米国の1ユーザー当たりのライセンス料金に置き換えると、それぞれ7541ドル、4万8011ドルとなる。

 各地域ごとの価格帯の違いを考慮してソフトウェア料金を割り引いても、価格の高さは際だつうえ、こうした割引きが長期間適用される保証はないと、Ghoshは指摘している。

 成熟した市場で見られるオープンソース導入関連コストの大半は、システムの移行費や関連ソフトウェアのアップデート費、スタッフの再訓練費などで占められている。一方新興市場では、技術プロジェクトが新たに採用されているケースが多いという。これは、オープンソースソフトウェアを用いることで、アップデートや再訓練の費用がかからなくなり、ライセンス料金の節約分が大きな差異となって表れることを意味している。

 国家がオープンソースソフトウェアを利用すると、地元産業の育成を助成できるという利点も生まれる。途上国市場は国内にソフトウェア産業を欠いていることが多いため、これは特に重要なポイントだ。

 Ghoshはブラジルで最近開かれたフリーソフトウェア関連のカンファレンスで、「地方企業のビジネスは、みずからが可能な範囲で、プロプライエタリソフトウェア向けのインテグレーションおよびサポートサービスを提供するのにとどまっている。ソフトウェアバグを修復したり、ユーザーの要望に応じてカスタマイズを行ったり、他のソフトウェアとの拡張的な統合を図ったりといった、高レベルなサポートを行うには、ソフトウェアに対する高次元なアクセスが必要になる」と語った(講演資料PDFはここから)。

 自国の言語でソフトウェアが利用できるという点も、各国政府がオープンソースソフトウェアを採用もしくはサポートする要因となっている。例えば南アフリカ政府は、生産性スイート「OpenOffice.org」を同国の11の公用語に翻訳するプロジェクトに対して、資金を供与した。同プロジェクトは最終段階にさしかかっているが、競合するプロプライエタリソフトウェアMicrosoft Office 2003は、南アフリカの公用語の中ではわずかに1言語、すなわち英語にしか対応していないことが同社のウェブサイトから分かる。

 「新興市場から見ると、オープンソースはローカリゼーションという面で効率的だ。ところがMicrosoftは、何らかの決断をする前に、その市場がどれほどの規模でどの程度戦略的なのかという事柄しか考慮しない」と、RedMonkのアナリストJames Governorは述べている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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