お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

独SAP ドナ・トロイ シニアバイスプレジデントに聞くSMB市場攻略の狙い

2005/02/24 10:30
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 独SAP(ヘニング・カガーマン会長兼CEO)は、セールスサイクル(販売までの期間)の早い中堅・中小企業(SMB)市場向けの同社ERP(統合基幹業務システム)を拡販するため、今年度(2005年12月期)から、認定パートナーを支援するためのインフラを整備するなどSMB市場の攻略に乗り出した。昨年7月に独SAPに入社した元IBMのドナ・トロイ グローバル中堅・中小企業向けビジネスシニアバイスプレジデントに、SMB市場攻略の狙いとマーケティング戦略を聞いた。

――世界的に中堅・中小企業市場(SMB市場)では、どのような市場戦略を展開しているのか?

トロイ SMB市場をセグメントすると、まずミッドマーケット(中堅市場)は従業員1000人規模、スモールマーケット(中小市場)は同100人程度に分けられる。当社のERP(統合基幹業務システム)では、「mySAP All-in-One(A-One)」が中堅市場で、「SAP Business One(B-One)」が中小市場を対象にしている。世界で約1300社の認定パートナーが拡販やサポートなどを行っているほか、中堅・中小企業向けの業務ロジックを組み込んで製品設計したソリューションは約500種類あり、SDK(ソフト開発用ツールキット)による機能拡張を含めると1000以上ある。

 当社のSMB市場における世界的な「Go to Market」(市場戦略)としては、A-oneで一部直販する以外は、100%認定パートナーを通じた拡販を行っていく。ERP別の成長として、昨年度(2004年12月期)は、A-Oneが世界的に対前年度比2ケタの成長、B-Oneは同3ケタの伸びを記録している。

――SAPは大規模向けERP「SAP/R3」でグローバル系の大企業市場において、圧倒的な強さをもっています。今、なぜ、SMB市場を狙う必要があるのか?

トロイ 将来的な企業のIT投資や成長領域を考えると、最もビジネスチャンスがあると見ているのがSMB市場だ。現在、世界的な企業の全IT投資額のうち、中堅市場の企業が全体の9%、中小市場は14%を占めているにすぎない。

 SMB市場は、IT投資の観点から将来の成長性を見越すと、IT投資を積極化するポテンシャルが高い領域だ。確かに、大企業向けの強みはあるが、今後はSMB市場に対しても、認定パートナーを通じて積極的に企業へリーチしていきたい。

――トロイ氏はかつて、IBMやネットワークアソシエイツ(現マカフィー)など、世界的に活躍する大手ITベンダーで、チャネル、マーケティング戦略を陣頭指揮してきたが、SMB市場を攻略する難しさも知っているはずだが?

トロイ 独SAPがSMB市場を攻めるうえでは、従来「SAP/R3」で志向してきた「Go to market」とは、マーケットのアプローチで違う展開をする。SMB市場では、マーケティングを重視する。このマーケティングでは、その業種・業態、企業規模をターゲットにするか、あるいはそうした企業がどんなERPなど業務アプリケーションを必要としているのか――など、詳細な分析が必要だ。

 まず、当社では、コア(中核)となるERPや業務アプリケーション、パイプライン、インフラを開発することで、認定パートナーへのサポートの提供を強化していく。SMB市場を攻めるうえでもう1つ重要なことは、「セールスサイクル」(販売までの期間)を短縮化することだ。SMB市場は、世界的に数千社でなく、数百万社単位で可能性を秘めていると分析している。

――そのSMB市場向けのマーケティング戦略のうち、どのようにターゲットを決めていくのか、独SAPなりの戦略があるのか?

トロイ 現在、さまざまな戦術を検討している。1つは、ターゲットとするインダストリー(業種・業態)企業に対するSAPが強みとするソリューションを提供するほか、ウェブベースでのマーケティングで情報提供したり、開発者や認定パートナーへの技術やソリューションの情報を提供するウェブサイト「SAP.com」を活用してもらい、この中にあるツールを利用してもらう。また、「コア・マーケット・キャンペーン」として、認定パートナーと共同で行うマーケティング施策を検討している。

 もう1つは、世界的なテレマーケティングを推進するため、現在そのインフラ整備を進めている。中堅・中小企業市場は、ボリュームビジネスだと認識している。

――世界的なテレマーケティングとは、具体的にどのような施策なのか?

トロイ 世界中の認定パートナーを支援するために世界的な拠点を整備して、パートナーへのサポート強化やボリュームベースでのマーケティング戦略、キャンペーン、データマネジメントなどをする。地域ごとの拠点をアジア、欧州、北米につくる計画だ。

 SMB市場向けの情報ポータルも構築して、そこに認定パートナーやエンドユーザーが入り、SMB市場向けのキャンペーンなどの情報を得ることができるサイトを構築しようとしている。一部ではできていて、日本でもローカライズが終了すれば開始される。

――ボリュームベースのマーケティングとは、具体的にどんな施策なのか?

トロイ 多くの潜在的なビジネスチャンスとなる企業に対するアプローチをすること。できるだけ、アプローチに関するメッセージをコンスタントに打ち出していく。毎日のように新たなキャンペーンを展開していきたい。

 つまり、提供できる製品やキャンペーンをパートナーや企業に提示して、その情報を基に、顧客から当社に接触してくるような関心のありそうな情報を提供する。大手企業に対する拡販戦略とは、根本的に違う。

――そのマーケティング戦略にパートナーはどう関わっていくのか?

トロイ 中堅・中小企業市場では、ほぼ100%チャネル販売を志向する。SMB市場向け情報ポータルなどで、当社が得た顧客からのリードをパートナー業種・業態別のノウハウや売上高比率などの能力に合わせ配分していく。また、こうしたリードを基にしたパートナーとの共同マーケティングも実施していく。

――2005年度(05年12月期)のA-oneとB-oneの数値目標は?

トロイ 財務的な数値は、公表していないが、業界水準の2倍速いスピードで成長を遂げたい。

――マカフィーなどでもSMB戦略を強化していたが、そこで培ったノウハウは独SAPの戦略にどう生かされるのか?

トロイ これまでの経験から、ボリュームビジネスにはテクニックが必要ということを実感している。多くの専門家は、SMB市場に大量のソフトを一度に売るのは困難だというが、こうした見方に対して懐疑的な見方をすることが重要だ。疑いの目をもって戦略を進めていく。

――SMB市場を攻略するうえで、05年度の具体的な戦略はあるのか?

トロイ さまざまなキャンペーンを予定している。現在、パートナーと協議を進め、多くのパートナーがこのテレマーケティング戦略に賛同を得ている。経験上、顧客は地元のベンダーや、ベンダーよりニュートラルな頼れるアドバイザーからの購入を求めている。日本でもエンドユーザーは、地方のベンダーを好んでいる。ローカルなパートナーに対しても、SAPのベースプロダクト・製品を提供していく。それに対して、地方のISV(独立系ソフトベンダー)やシステムインテグレータがアドオンしたり、小さなディラーがそれらをベースに拡販できる体制を広げる。

――そのため、大企業に対するセールスと違い、手間はかかり、セールスのサイクルが早くなる?

トロイ SMB市場に対しては、アプローチ方法を従来と変えた。例えば、発注、契約、教育などの方法を変えていく。パートナーに対して平等にリードを配分していく。今、質の高いパートナーを求めている。できるだけシンプルに情報を提供する。SMB市場向け情報ポータルなどがその方法の1つだ。

――SMB関連製品のアップデートは?

トロイ 英国では先行発売しているV7.1からバージョン2004という「B-one」を近く日本でリリースする。生産管理(MRP)のモジュールが加わる。

【略歴】
IBMで20年間の在職中にマーケティングセールス責任者などを歴任。その後、チボリシステムズで世界的なチャネルとアライアンスのバイスプレジデント、チャネル管理ソフト会社のパートナーウェアのプレジデント兼CEO、ネットワークアソシエイツ(現マカフィー)の世界的なチャネルのエグゼクティブバイスプレジデントなどに就任。2004年7月には、独SAPに入社し、中堅・中小企業向 けパートナーの管理とカスタマなどのマーケティング戦略の構築・遂行の責任者となる現職に就いた。

SAPジャパン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社