VisualIDによって判明した興味深い事実の1つは、人間が何かを記憶する際には、アイコン自体の意味はあまり関係ないということだ。たとえば、のたうつ海の怪獣のアイコンを、月間売上高の概要を説明するファイルに使っても、あるいは海岸でのバケーションのURLメモに使っても、人々の記憶には影響しない。
Lewisによると、こうした類の「景色」は、脳によるデータの視覚化には利用されず、代わりに視覚的な検索と記憶を可能にしていることが分かったという。VisualIDのアイコン同士は互いに関連している場合がある。VisualIDでは、似ている名前のファイルには似たアイコンを適用し、アイコン同士はあるテーマに沿ったメタアイコンでグループ化される。しかし全体として見ると、ファイルの中身とアイコンの画像との間には本質的なつながりはない。
「郵便で届くはずの本の主題からは、その外観を予想できないことも多い。しかし恣意的な外観ならほとんどすぐに分かるし、1度見ればすぐに覚えられる」とLewisはメールに記している。「視覚情報とコンテンツの関連付けは不必要だと分かったことが、我々の大きな貢献の1つだと思っている」
各ファイルに固有のアイコンを自動生成
doodleと呼ばれるVisualIDのアイコンは、今日のソフトウェアのアイコンよりもずっと種類が豊富だ。たとえば、Adobe Acrobatファイルの手書き三角形マークのように、通常、PCのアプリケーションにはアイコンがあって、同じアプリケーションで作成された文書やファイルにはすべて同じアイコンが付くようになっている。しかしVisualIDでは各ファイルに固有のシンボルを自動的に割り当てる。
アイコンの形はランダムだが、あるファイルに似た名前の新しいファイルができると、VisualIDは元のファイルのアイコンの変化形を作成する。こうしてできたアイコンはそれぞれ形が異なるが、後の識別用に着色する場合もある。
今後の課題は、よいアイコンの条件を考えることだ。VisualIDのアイコンは、混乱や画像の重複を避けるため故意に複雑になっているが、同時に過度に複雑なものは避けるように作られている。同研究チームでは、ものの各部分を他の部分から予想できない場合にそれを複雑なものとする、Kolmogorovの複雑さの定義を採用している。
VisualIDプロジェクトが今後のソフトウェア開発に影響を与えるかどうかを見極めるには、まだ時期尚早といえる。しかし初期テストでは、このシステムの有効性が示されている。ある実験で4回のファイル探しに要した平均時間は、VisualIDのユーザーでは25.2秒、一般的なアイコンを探したユーザーでは30.5秒だった。また別の実験では、VisualIDのタグを翌日も覚えていた被験者が37%いたが、一般的なマークの場合は24%の被験者しか覚えていなかったという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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