収益性を上げるためにネットワーク事業者が取り組むべき3つの課題

 「いま、『収益性の向上』という何にも増した命題がネットワークサービスプロバイダに突き付けられている。その解となるコンバージェンス(集中化)として、シスコでは3つの解を用意している」――6月30日、「Networld+Interop 2004 Tokyo」で行われた基調講演「進化するネットワークとそのインパクト」の中で、Cisco Systems上級副社長兼ジェネラルマネージャーのマイク・ボルピ氏はこのように語った。

 いまネットワーク事業者は、音声のほか、データやビデオストリーミングなどにサービス領域を拡大している。一方で、価格競争や膨張する設備費など、収益性は年々減少しているのが現状だ。さらに、顧客ロイヤルティの維持向上という課題にも対処しなくてはならない。こうした中、コストを削減し、収益性を高めるにはどうしたらいいか。

 ボルピ氏は、いまネットワーク事業者が集中すべき分野として(1)ネットワークの簡素化、(2)サービス統合、(3)アプリケーション統合という3点を示す。

シスコシステムズ社 上級副社長兼ジェネラル マネージャー ルーティングテクノロジーグループのマイク・ボルピ氏

 「いまは、ネットワークレイヤー1つを取っても、ATM/フレームリレーサービスやVPN、IP、SONET/SDHなど複数のレイヤーがあり、それぞれで異なるサービスやアプリケーションを提供している。このため、サービス拡大に伴いコストも増加しているのが現状だ。これらの各分野で簡素化・統合化を施すことで、コストの削減と新しいサービス開発につなげることができる」(ボルピ氏)

 例えば複数のサービスを統合し、単一ポイントでエンドユーザーとやり取りすることで顧客ロイヤルティの維持が期待できる。またアプリケーションの垣根を低くし、音声や動画、PtoPやVoIPアプリケーションの組み合わせを容易にすることで、これまでとはまったく異なる新しいアプリケーションを開発できる可能性も生まれる。

 そこでシスコが日本時間の6月29日発表したのが、同じネットワークから複数のサービス/アプリケーションを統合し、ネットワークプロバイダの収益性向上を可能にするルータ「Carrier Routing System-1」(CRS-1)だという。ボルピ氏は、「CRS-1は単なるルータではなく、「1台でIPsec・VoIP PBX・ファイアウォール・ウェブキャッシュの機能を持つプラットフォーム」と同製品の特徴を説明する。

 これら4つの機能を実現するのが、同社が開発したLinuxベースの新OS「CISCO IOS XR」である。本OSの開発に際しては、4年間にわたりエンジニア約300名を投入、5億ドルを費やしたという。

 同製品はIPv4、IPv6のほかMPLSなど複数のネットワークプロトコルに対応するほか、188の独立したCPUを1つのチップに集約、最大72のラックをつなぎあわせることで、高可用性と拡張性を実現した。これにより、「一度稼働したら10年間は動き続けることが可能。システムを停止させることなくソフトを更新できるので、新しいサービスを迅速に立ち上げることができる」(ボルピ氏)とのことだ。

 また、ボルピ氏が語ったところによると、同社では年間34億ドルを研究・開発に費やし、新しいチップやソフトの開発を手がけているという。「これはIPソフトの信頼性向上や管理負荷の軽減のために必要な投資。これにより、われわれの顧客であるネットワークサービスプロバイダのコスト削減を可能にし、収益性向上という付加価値を提供できる」(同)。

 最後に同氏は、この2年間で東京・大阪のネットワークトラフィック量が10倍になっていることを述べ、同社にとっての日本市場の重要性を改めて強調した。「いままでIT製品は米国で開発され、その後世界へ輸出されるという経路が一般的だったが、ネットワーク分野に関していえばまず日本の顧客の要望に応えることが第一になっている。これからこの業界はさらなる発展が予想されるので、われわれもその期待に十二分に応えたい」(ボルピ氏)と締めくくった。

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