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「優れた技術だけでは成功しない」:MOT討論会にて

2003/07/08 21:14
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 富士総合研究所主催のイベントValue Forum 2003が8日、都内にて開催され、「テクノロジーマネジメント(MOT)が拓く日本の未来」と題したパネルディスカッションが行われた。パネラーとして招かれたのは、藤沢薬品工業代表取締役社長の青木初夫氏、日立製作所ミューソリューションベンチャーカンパニーCEOの井村亮氏、Defta PartnersのCEO原丈人氏、大阪大学大学院医学系研究科教授およびアンジェスMG取締役の森下竜一氏、そして富士総合研究所常務執行役員の土屋政晴氏だ。コーディネーターは、慶應義塾大学ビジネススクール教授の青井倫一氏が務めた。

 MOTとは、米国ではじまった教育プログラムで、技術開発において必要となる専門的な経営能力の向上を目指すもの。高い技術力があってもそれが事業化につながらないベンチャー企業が多く見られるため、技術と経営を結びつけようという視点で注目されている。今回のディスカッションでも「MOTというテーマにとらわれず、日本および日本企業のあるべき姿について語ろう」(司会の青井氏)との呼びかけで、様々な意見が飛び出した。

 大学教授でありバイオベンチャーの取締役を務める森下氏は、「ベンチャー企業の問題点は、“世の中に必要なものは何か、何があれば何を解決できるのか”といった視点が先にくるべきなのに、“われわれはこんなにすばらしい技術を持っている”ということが先に来ていることだ」と述べた。優れた技術を持っていることはベンチャーが成功するための必要条件のひとつでしかなく、技術が必ずしも成功に結びつくわけではないことを警告する。同様に、特許取得イコール成功ではないことも指摘した。

パネルディスカッションの風景

 米国で経営学を学び、シリコンバレーで起業の経験を持つ原氏も同じような意見を述べる。「米国ではMBAを学ぶ際にどうしても“いかに株価上昇につなげるか”といったことを考えがちになるが、忘れてはならないのが“自分は何のために事業をやっているのか”ということだ。日本ではこのような米国式の変な価値観が蔓延しないよう、ビジネスの原点を考えた経営を根付かせるべき」と原氏はいう。

 自ら社内ベンチャーを立ち上げた経験を持つ日立製作所の井村氏は、「研究者も自分で稼ぐ時代だ」と語る。同氏は、経営方針で25%コストカットが命じられた場合を想定し、「これまでのマネージャーは25%カットと言われると、すべてのプロジェクトに対し均一に25%の経費削減を実施してきた。これからのマネージャーはフォーカスする部分を決め、生かすプロジェクトと殺すプロジェクトを決めて25%カットする。だが私は、25%カットしろと言われれば、25%分を自分の足で稼ぎ、研究費にあてる」と強気。そのためには顧客と直接対話をし、顧客が何を必要としているかを見極める必要があるのだと井村氏。「技術の日立というが、技術だけの日立ではどうしようもない。技術と顧客ニーズをつなぎあわせる力が重要だ」と語る。

 富士総研の土屋氏は、インターネットやITの普及が企業経営に与える影響について述べ、「これまではIT技術でいかに情報を集めるかという部分に注目が集まっていたが、これからはその情報をいかにして活用するかを考えるべき」と語った。同氏は企業内でのナレッジマネジメントの重要性を語り、自社開発したナレッジマネジメントソフトを紹介しつつ、「誰がどういった知識を持っているのか管理することで、過去の知識が再利用できる。それが知的生産性の向上につながる」と述べた。

 個人の持つ知識が重要であるのはもちろんだが、ベンチャーにはその知識を持つ人間がなかなか集まりにくいという問題がある。大阪大学の森下氏は「お金を稼ぐのも、モノを作るのも、“人”がいなくてははじまらない。日本は流動性のない社会だが、ぜひ企業を飛び出してほしい」と主張。そのために必要なこととして藤沢薬品の青木氏は、日本企業の給与体系の均一化を何とかすべきではないかと述べる。米国在住も経験した同氏が感じたのは、「日本人は非常に優秀である」ということ。にもかかわらず、「この会場にいる最高給与所得者と最低給与所得者の差はそれほどないだろう」という。「やはり伸びる人は思い切り伸ばしていく土壌を作ることが大切ではないか」と青木氏は語った。

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