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米倉教授が語る「デフレ経済生き残り策」

2003/06/17 21:53
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 一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏は17日、日本アバイアの開催するイベントAvaya World Japan 2003にて「21世紀の経営革命」と題した基調講演を行った。米倉氏は、現在の経済状況が突然よくなることはなく、根拠のない楽観論は無謀だと語りつつも、個別に好業績をあげている企業が存在することをあげ、デフレ経済での生き残り策について語った。

新しいコスト削減法を

 米倉氏が最初に取り上げたテーマはコスト削減だ。同氏は、やみくもに人を少なくするようなコスト削減ではなく、戦略的なコスト削減が大切だと語る。「新しいコスト削減方法」とは、生産ラインからコンベアーを取り除いたセル方式、部門や職務を越えて問題点に取り組むクロス・ファンクショナル・チーム、自動化されたSCMなどである。セル方式はキヤノンで、またクロス・ファンクショナル・チームは日産のゴーン社長が実践したことで知られている。

 米倉氏はまた、これまで日本企業はすべての機能を内部に抱えていた点を指摘する。「内部管理コストと市場取引コストを比較分析し、内部管理コストの方が高い場合はアウトソーシングなどを活用するべきだ」(米倉氏)。ネットワーク機能の発達やファブレス、BtoBといった方式を含め、アウトソーシング市場は現在ますます発達しており、「自分にしかできないコアコンピタンスの部分を残しつつ、他社のコアコンピタンスを利用して戦略的に提携することが重要だ」と語る。

付加価値を増大するためには?

一橋大学イノベーション研究センター教授、米倉誠一郎氏

 コスト削減策のみならず、付加価値増大のための戦略についても米倉氏は語る。付加価値のある製品、つまりいい製品とはどういうものなのか。米倉氏によると、それは「品質がいい」「安い」といったことよりも、「売れる製品=いい製品」なのだという。「たとえばソニーのVAIOは、これまで高スペック・低価格を売りにしていたパソコンとは全く違ったターゲットで売りに出て成功している。つまり商品差別化のカギは顧客にあるのだ」と米倉氏はいう。

 商品に付加価値をつける戦略に加えて、売り方を見直すこともひとつの戦略だ。米倉氏は、研究開発の中に「データベースR&D」という考え方を取り入れることが重要だと語る。「たとえばコンビニエンスストアが顧客のデータを集めて商品の回転率と利益率の関係を測ったように、データベースを分析して戦略を考えることが大切だ」と米倉氏は述べた。

 また、マーケットシェアを獲得することに必死になるよりも、既存顧客の保持(カスタマーリテンション)が重要だと同氏。米国のある調査によると、新規顧客を開拓するコストが100だとすると、既存の顧客をキープしておくためのコストはほんの7%なのだという。「テレビ広告などで相手の見えない顧客をターゲットに広告を出すより、顔の見えるビジネスをすることに力を入れるべきだ」

ベンチャー市場を築こう

 最後に米倉氏は、日本のベンチャー企業の状況についても語った。「人はなぜ当たりもしない宝くじを買うのか。それは300円で3億円が当たるかもしれないという、ローリスク・ハイリターンのゲームだからだ」。同氏によると、起業の際に銀行から借金をするのは、返済が義務付けられているためハイリスクなのだという。そこで「ベンチャーキャピタルからノーリスクの投資を受け、起業のトライアルを増やすことが日本でも重要だ」と語る。

 ただし、このゲームの参加者の質で国の競争力が決まってくることも米倉氏は指摘する。「たとえば米Sun Microsystemsの共同設立者Bill Joyは、将来教授になるだろうと誰もが考えていた優秀な人材だった。それが1万ドルでワークステーションを作らないか、というゲームに乗ったのだ。日本でもこのような例を多く生み出すべきだろう」(米倉氏)。優秀な若者を育てるべく、教鞭を取り続ける同氏の熱い思いが垣間見えた。

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