「現時点でSARSによるIT業界への影響が最も大きいのは香港、なかでもコンシューマー市場への影響は大きい」―― 米IDCの国際ビジネス部門シニアバイスプレジデント、Philippe de Marcillac氏は20日、都内にて開催された同社の年次カンファレンスにてこのように語った。
IDCではSARSの影響を元に、IT投資額の予測を修正している。Marcillac氏によると、3月に同社の立てた予測と5月に修正した予測の差が最も大きいのが香港で、その差はマイナス3%近くとなっている。香港に次いで修正額の差が大きいのは、中国、シンガポール、マレーシア、台湾、韓国の順。ただ、台湾では最近になってSARS患者が増えていることもあり、「IT投資額はさらに下がるだろう」(Marcillac氏)と予測している。
また、SARSのIT支出への影響については、「コンシューマー市場への影響が最も高い」とMarcillac氏。同氏によると、2003年度第2四半期のIT支出は、香港のコンシューマー市場でマイナス25%にもなるという。中国やシンガポールなどでもコンシューマー市場のIT支出はマイナス20%近くになると同氏は予測している。一方、企業、政府、教育機関を合わせたプロフェッショナル市場のIT支出は、マイナス成長としてはいるものの、いずれの国でもSARSの影響はコンシューマー市場の半分以下となっている。例えば香港のプロフェッショナル市場におけるIT支出は、マイナス10%程度にとどまっている。
IT業界の見通しは悪くない
米IDC国際ビジネス部門シニアバイスプレジデント、Philippe de Marcillac氏 | |
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IT投資・支出額の予測をマイナス修正したIDCだが、アジアにおけるIT業界全体の見通しについてはそれほど悲観的ではない。Marcillac氏は「SARSの影響によるダメージは2003年第4四半期には回復する」としており、IT投資はまだ上昇傾向にあることを強調している。特に通信業界においては、モバイル通信のインフラが発展しつつある中国や、固定・携帯共に通信系ビジネスが発展しつつあるインドなどでの発展がめざましいとMarcillac氏は見ており、「現在世界のIT市場における中国とインドの順位は、中国が7位でインドが22位となっているが、2007年には中国が6位、インドが16位となるだろう」としている。
Marcillac氏はまた、中国で製造業が伸びつつある点に注目している。同氏は、「中国では、台湾で主流となったOEMのようなビジネスモデルではなく、自国ブランドが数多く立ち上がっている」と指摘、中国のPCやサーバ市場で高いシェアを握るLegend社をはじめ、IT業界でも地元企業が幅を利かせている現象を「日本の70年代、80年代のようだ」と述べている。Marcillac氏は、「中国が技術大国になるのかという問いには、この先5年はまだ無理だろうと答えざるを得ないが、世界の中でも競争力の高い国となるのは間違いない」と語った。
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