マイクロソフトの2015年を振り返る--過去の栄光からの脱出、クリアすべきハードル

 2015年と2016年のMicrosoftについて書き始める前に、筆者が考える「Microsoftが強かった」理由について、少しだけ触れておきたい。

Microsoftの転換点は1995年

 Microsoftという会社は、技術的にも、マーケティング的にも、またデザインセンスやブランドイメージなどについても、決して素晴らしい会社ではなかったと思う。しかしながら、経営判断は実に素早く、業界が向かう正しい方向を見事に捉える嗅覚があった。

 そうした嗅覚はさまざまな場面で発揮されてきたが、もっとも大きな同社の転換点だったのは1995年、Windows 95が発売された年である。

 ご存知の通り、Microsoftは日本をはじめさまざまなPCメーカーにBASICインタプリタを販売して基礎を作り、IBM PCに採用されたPC DOSの開発パートナーに選ばれた。このIBM PCはハードウェア仕様が公開されていたこともあり、安価な互換機市場が生まれ、その互換機市場にPC DOSと同等の機能を持つMS-DOSを提供することで飛躍的に存在感と業績を伸ばした。

 そのMS-DOSで動作するWindowsは、単なるグラフィックユーザーインターフェース拡張のアドオンソフトという出自で、技術的にも品質的にも、決して褒められたような製品ではなかった。そんなMicrosoftが成長する中で、社運をかけてさらに上のステップを狙うための製品がWindows 95だった。

 ところが、今ではほとんどの人が忘れているだろうが、Windows 95はインターネットに接続するための最低限の機能は備えていたものの、Microsoftはインターネットで標準的に使われているアプリケーションが、その後の主流になるとは考えていなかったようだ。さすがに、それではマズイと思ったのか「Plus Pack」というアドオンパッケージを別途発売し、インターネットを利用するためのツールキットを提供した。

 しかし、Windows 95に統合されていた通信サービスは「The Microsoft Network」と呼ばれるもので、これはパソコン通信をビジュアル拡張したものだった。一応、ウェブにもアクセスできるものの、Microsoftが提供するサーバで変換しながらアクセスするという変則的なものだった。

 このサービスは、おそらく当時、多くのユーザーを獲得していたAmerica Online(AOL)のサービスを真似た上で、さらに拡張するというコンセプトだったのだろう。結論を言えば、ユーザーからの評価はズタボロで、実際にWindows 95が出荷される頃には、すでに死に絶えていたと言ってもいい。

 ところが、Microsoftはそこから凄まじいペースで巻き返しを始めた。

 1995年12月にビル・ゲイツが講演した「Internet Strategy Day」までには、ブラウザ戦略からアプリケーション戦略、OSとしての進化の方向性など、あらゆる面で「インターネットを最重要視した戦略に変更する」とアナウンスされた。実際、1996年にはWindows 95がインターネットを軽視していたことなど、誰も憶えていないほど、Microsoftという会社の向かう方向性、社員の考え方などあらゆる部分が、インターネット中心になっていた。

 この俊敏さこそが、Microsoftの強さの源泉だったのだと、今思い返してもあらためて感じさせられる。

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