仮想現実の未来はどこへ--FacebookによるOculus VR買収の意味を考える - (page 2)

Nick Statt (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2014年03月31日 07時30分

 一方で、Facebookは否定的な要素があふれ出すのをせき止めようとしてあらゆる手を尽くしており、Oculusは当分の間はOculusのままであって、ゲーム分野に集中すると述べてわれわれを安心させようとしている。Facebookはゲーム分野に集中する理由を「最も進んでいる」からだとしているが、それは商業的に最も見込みがあるという意味だ。

 Zuckerberg氏は発表後に行われた電話会見で、「われわれがハードウェア企業ではないのは明らかだ。このデバイスから利益を上げるつもりなのではない。長期的には、これはソフトウェアおよびサービスであると考えている」と語った。もちろんこれを文字通りに受け取ってもよい。しかし、Facebookが自社の従来のロードマップに手を加えるだろうと考えることができる理由は見えていない。仮想現実を安価で手軽なものにし、そのシンボル的存在に資金源を与えても、Facebookにとってのメリットになるのは将来的な話だ。

 なぜなら、Facebookがこの買収取引から引き出せるもの、つまり両社の関係性のもう1つの面には、この先5年から10年の産業を変革するような市場に、最も早く、最も大きな印を刻むチャンスがあるからだ。Zuckerberg氏は「今回の買収は、コンピューティングの将来への長期的な賭けだ」と述べた。

仮想現実はゲームより大きい

 本質的には、Oculusは何よりもまずゲームプラットフォームとなることに全力を尽くしている。そしてゲームは、まさに仮想現実が最初にメインストリームとなり、商業的に実現する場所だ。われわれはそれを既に目にしている。宇宙空間での戦闘ゲームである「Eve Valkyrie」は基礎の部分から仮想現実向けに開発されている。またソニーは、モーションコントロールを最初から投入するためにあらゆる努力をしている。

 しかし、Oculusによって将来的に仮想現実の範囲を広げることを、Facebookが視野に入れていないというわけではない。

 Zuckerberg氏は会見で、「ゲームの後には、Oculusをほかのさまざまなエクスペリエンスのプラットフォームにするつもりだ」と述べている。「自宅にいながらにして、ゴーグルをかけるだけで、コート際の席で試合を観戦したり、世界各地の生徒や教師がいる教室で勉強したり、医者と顔を合わせて診察を受けたり、仮想世界の店舗で買い物をして、おもしろそうな製品に触れたりあれこれと探したりすることを想像してみてほしい」

 最新の没入型仮想現実を体験したことのない人にはばかげたことに思えるかもしれない。しかしうそっぽく聞こえるとしても、「百聞は一見にしかず」という昔からある表現がここにも当てはまる。仮想現実の用途は無限にある。

 仮想世界の店舗や、より良いテレプレゼンス、仮想世界の教室での学習やビデオチャットばかりではない。テレビゲームを、業界で最も望まれている夢のレベルへと引き上げる、まったく新しいエクスペリエンスがある。例えば、自分とは違う性別をリアルタイムで経験したり、火星上の様子を実際にインタラクティブにシミュレーションしたりするのはどうだろうか。こうしたことは現在、構築や開発、実験が進められている。

 次に来るのは文字通り、想像力を解析するプロセスだ。迷惑でうっとうしい広告や、規制当局による介入、プライバシー上の障害があるだろうか。もちろんあるだろう。現在のパーソナルコンピューティングをめぐって、あるいはブラウザやプロパティ、閉鎖的なゲームのエコシステムの中で、さらにはモバイルアプリやスマートフォン用OS上で、われわれが対処したり、嫌ったり、無視したりしているようなことはすべて、仮想現実にも存在するだろう。

 しかし、そうしたあらゆるプラットフォームやテクノロジについて、われわれが好む部分、あるいは遊びや感覚的体験の本質を変えるような経験について言えば、仮想現実にもそれと同等のものが存在するだろう。

 BeAnotherLabによる実験「The Machine to Be Another」(他人になるための機械)は、他人の目を通してものを見ることを可能にさせる。
BeAnotherLabによる実験「The Machine to Be Another」(他人になるための機械)は、他人の目を通してものを見ることを可能にさせる。
提供:BeAnotherLab

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