ネット選挙の課題は山積み--求められるのは“普段からのソーシャル活用”

 7月21日に投開票がなされた第23回参議院選挙は、自由民主党が過半数となる65議席を獲得する結果となった。選挙前に掲載した記事では、各党や候補者によるソーシャルメディアの活用について紹介したが、今回は、ネットでの選挙活動にどのような効果があったのか、そして今後ネットはどう利用されるべきかを考えたい。

候補者から見るネット選挙の活動と効果

 今回の選挙では、ネットのみで選挙運動をする候補者もいた。自民党の比例選挙区として立候補した伊藤ようすけ氏は、各界の著名人らの応援や対談の様子などを中心にソーシャルメディアなどで情報を発信した。ネットを中心とした活動だったが、具体的な政策議論などはあまり活発ではなく、支持を集めるほどには至らなかった。

 東京選挙区において、教育やIT政策を軸とした鈴木寛氏は、昼間は街頭演説、20時以降は自前のスタジオにて有識者を交えた対談をネット中継で配信するなど、ネットのツールを駆使して選挙運動を実施。しかし、選挙期間中には自身に対するネガティブキャンペーンともいえる動きが起き、その影響が少なくなかったようにも見える。選挙直前でも、もう1人の民主党公認候補だった大河原雅子氏の公認が取り消されたこともあり、党としての意思統一が明確に打ち出せなかったことも落選に大きく影響したように見える。

 一方、今回の選挙で躍進したのは無所属の山本太郎氏だ。山本氏は各地で精力的に街頭演説を実施。その街頭演説の様子をツイキャスなどで配信したほか、Twitterなどを通じて広く有識者の支持を集めていった。緑の党から出馬した三宅洋平氏も山本氏と同様に原発問題などをテーマに演説。ネット中継なども駆使し、連日“選挙フェス集会”を展開し、浮遊層に対してのアプローチが効果をあげた。

 全国的に、ネガティブキャンペーンによって当落に影響を及ぼした候補者も少なくない。これまでの選挙でも誹謗中傷のビラや怪文書などは存在したが、ネットによって批判などの言説は急速に拡散された。訂正や誤解を解くよう対応をするも、一度広がった内容を止めるほど、選挙期間は長くなかったと思われる。

今後の課題は山積

 ネットを中心とした選挙運動の効果は、今回の結果を見る限り大きくない。著名人などの応援が投票に大きく結びついたとは言い難く、ゆるキャラの活用やカメラアプリ、LINEなどのスタンプを配信した政党もあったが、選挙直前の活動が得票に結びつくほどの効果があったとは言えない。

 リアルの選挙運動を重視し、有権者と直接的に会ってコミュニケーションを行う候補者が実績を上げた形となった。政策を分かりやすく伝える地道な活動こそ、投票行為に対しての効果は大きいのではないだろうか。

 投票率は、52.61%と前回の参院選よりも5.31%減少した。投票率自体は政策や社会情勢などさまざまな要因があるため、ネット選挙のみで影響を断定するのは難しい。出口調査によると、インターネットの情報を参考にした有権者は、約2割しか見られなかったという。

 もちろん、今回の選挙結果を受けてネット選挙に意味はなかったと決めつけるのは時期尚早だ。今回の選挙は、全般的に政党や候補者も手探り状態でのネット活用であったことは否めない。演説場所のお知らせやお昼のランチに何を食べたかなど、“業務連絡”に近い投稿が多く見受けられた。有権者との双方向のやりとりをするまでに至っていないというのが正直なところだ。今後は、リアルとネットを通じた政策議論などを活発にする機会を設ける必要があるのではないだろうか。政党や政治家は改善点を洗い出し、効果的なネット活用を展開していくため、まだまだ時間が必要だ。

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