ソーシャルTVサービスとは何か

ソーシャルTVサービスのビジネスモデルと可能性(2)

許 直人(ループス・コミュニケーションズ)2013年01月11日 10時00分

ソーシャルTVの基本的なビジネスモデル

 前回、ソーシャルTV系サービスの概要を見てきましたが、ビジネスモデルはどのようになっているのでしょうか。いずれのアプリも「テレビ」との連携が前提条件となっているため、「ユーザーの視聴体験を豊かにすること」を目指して実装されています。ただ、それではビジネスモデルにはなりえません。視聴体験が豊かになるというプロセスを通して、結果としてどういった行動を求めるのか。

 わたしが見た範囲で類型化してみました。


1.リアルタイム視聴へ視聴者数を誘導する
 オンラインの接点から、テレビへの視聴誘導を目指す種類のサービスです。

オンラインからの視聴者誘導 オンラインからの視聴者誘導
※クリックすると拡大画像が見られます

 典型的なのは、wiz tvemoconのようにTwitterで番組の盛り上がりを測定し、その情報を可視化することにより需要喚起、視聴誘導へ導くアプリが潜在的に持っているビジネスモデルです。役割としては、いわゆる番宣(番組宣伝)ということになるでしょう。

 このモデルが成り立つかどうかを考えると、まずはリーチでほかの番宣手段に並ぶものにならなければなりません。5000万世帯の1%にテレビを付けさせるためには、単純に考えて最低50万人にリーチする必要があります。リーチした対象がテレビを視聴可能な状況にあるのか。リーチした後どれくらいのユーザーが行動するのかといったことを考えると、アクティブで300万~500万人程度の会員は欲しいところです。もし、サービスの会員基盤をこれくらいの規模に育てることができれば、視聴率に影響を与えられる可能性が出てきます。

 ただ、大きな落とし穴としては、このビジネスモデルの主な成功要因が「たくさんの潜在視聴者にリーチ」することであるため、その手段自体はテレビと関係なくてもいいという点が挙げられます。極端な話、半年で8000万円(初期2000万弱、1000万×6カ月)程度の広告予算があればLINEで番組アカウントを開設してしまえば、あえてソーシャルTVという手法に頼らずとも効果を上げることが可能だと思われます。

 実際にLINE公式アカウント50位以内には「ZIP!」や「Music Lovers」「NHK紅白歌合戦」などがランキングしていますので、ビジネスモデルとしてはこういったチャネルとも競合していくことになります。

 単に会員数、ユーザー数ではなく「潜在視聴者」というテレビ愛好クラスタをいかに惹きつけるか。そして「視聴可能な環境」という歩留まりを悪化させる要因をどう排除するか。このあたりにサービスごとでの工夫のしがいがありそうです。

 サービスが付加価値を発揮できるまでの道のりの長さから考えても、ソーシャルTVアプリの勝者が最終的に取る戦略であって、短期的に目指すモデルではないように感じます。

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