「ペイパル・マフィア」から「フェイスブック・マフィア」へ

前回はFacebookのCEO、Mark Zuckerberg氏の服装からFacebookの企業文化と競争力の源泉を考えました。

今回著者は、シリコンバレーで新しい世代の人材ネットワークが、先行世代の影響を受けながら育ち始めていることを(いわゆる)「PayPal Mafia」を例に示していきます。(編集部)


クオラの増資が意味すること

 QuoraというQ&Aサイトを運営するシリコンバレーのベンチャーが、米国時間5月15日に新たな増資を完了したと、5月16日の朝に一部の媒体が報じていた。

 「まだこれといった売上もないベンチャー企業に4億ドルもの評価額が付き、その評価額で5000万ドルもの資金が集まった」といえば、ちょっと前までなら結構な騒ぎになっていたはず。だが、ここ1年か1年半ほどの間に一連の株式公開——2011年5月のLinkedIn、同11月のGroupon、同12月のZyngaや、同12月のTwitterなどの大型資金調達、さらにはアイデア以外は何にもないのに4100万ドルも集めたColor Labsのような例、そして先月初めのFacebookによるInstagramの「10億ドルのお買い物」と、大きな金額が出てもあまり驚かないような流れになっている。

 まして、Facebookの株式公開を控えた騒動の真っ最中ということもあって、Quora増資のニュースも一部の媒体が文字通り「軽く触れた」程度の扱いだった。

 そんなネタをなぜわざわざ採り上げるかといえば、このディールのなかに今回記そうとしている話の主立った「役者」がわりとうまく顔を揃えているからだ。

シリコンバレーに張り巡らされたペイパル人脈

 まず、この増資の音頭を取ったのが「PayPal Mafia」の大ボスの一人として知られるPeter Thiel(ピーター・ティール)氏。ただし、今回は自らの運営するFounders Fundでははなく、「自分の“ポケットマネー”から」のようだ。

 Peter Thielといえば、PayPalの共同創業者。同社をIPOまで持っていって、バブル崩壊のなかでもなんとかeBayに売り抜けて……などと書きはじめると、それこそ話が終わらなくなる。その代わりといってはなんだが、本稿末に人物や現象などを簡単に解説した参考情報のリストを並べておくので、そちらを参照頂きたい。

 さて、この軍資金を預かるQuora側には、いずれも「元Facebook(の初期メンバー)」といった肩書き(?)がつく2人の共同創業者——Adam D'Angelo(アダム・ダンジェロ)氏と、Charlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏の名前が見える。

 とくにD'Angelo氏については、Mark Zuckerburg氏の高校時代の寮のルームメイトで、Facebookの初代CTO(最高技術責任者)という点が注目される。なお、このふたりが通った東部の名門校Phillips Exeter Academyもまた情報源としては興味深い存在で、Wikipediaを見れば日本語版と英語版のいずれのページにも「著名な出身者」の欄に意外な名前を発見するだろう。(

 話を急ごう。このQuoraのディールには、Thiel氏以外にも、Benchmark Capital、Matrix Partners、Northbridge Venture Partnersといったベンチャーキャピタル、それにD'Angelo氏自身も参加したという。

 これに関して、Wall Street Journalは「この投資はかつてFacebookで幹部を務めた連中——時に『フェイスブック・マフィア』と称されることもある——が、シリコンバレーでどう繁栄しているかを示すもの」(註1)と記し、さらにNorthbridgeで窓口に立ったJonathan Heiliger(ジョナサン・ハイリガー)氏のコメントを次のように紹介している。

「(Quoraへ投資した理由のひとつとして、数年前一緒に働いたこともあるD'AngeloならびにCheeverとの友情を挙げたHeiligerは)アダムとチャーリーがどんなヤツかは知っているし、2人のことはどちらも高く評価している。われわれはFacebookで一緒に働いていた」(註2)

 いっぽう、Bloombergのブログ「Tech Deals」には、Thiel氏から投資を受けたことについて、Cheever氏の次のようなコメントがある。

「彼(Thiel氏)はマクロトレンドに対してとてもよく目が効く人物。(ベンチャーへの投資に関して)たいへん素晴らしい実績を持ち、われわれの方向性が間違っていないことをよくわかってくれる彼のような人間に認められたことを、とても快く思っている」(註3)

 さらにこの記事には、Quoraの社外取締役も務めるBenchmarkのMatt Cohler(マット・コーラー)氏の次のようなコメントもみられる。

「シリコンバレーでは、たとえばFacebookのような(ベンチャーのなかでも)最良の会社で、みんながどうものをつくればいいかを学ぶ(略)アダムやチャーリーのことは何年も前から知っている。Facebookでずいぶんと一緒に仕事をしていたから」(註4)

 Matt Cohler氏は、いま若手のなかでもっとも面白い「脇役」だと私は睨んでいるが、それは次のような理由による。(次ページ「Facebookの社員番号7番」)

註1:フェイスブック・マフィア

The investment is a sign of how former Facebook executives - sometimes referred to jokingly as the Facebook "mafia" - are flourishing in Silicon Valley.

Former Facebook Hands Capitalize on Buzz - WSJ


註2:アダムとチャーリーがどんなヤツかは知っている

Mr. Heiliger said one of the reasons he invested in Quora is because of his friendship with Mr. D'Angelo and Mr. Cheever when they worked together at Facebook several years ago.

"I know Adam and Charlie and think highly of both of those guys," Mr. Heiliger said. "We worked hand-in-hand at Facebook."

Former Facebook Hands Capitalize on Buzz - WSJ


註3:ピーター・ティール評

"He has a good eye for macro trends," Cheever, 30, said in an interview. “It does feel good to have someone who has shown a pretty good track record and pretty good taste validating our directions."

Quora Taps Thiel and Facebook Connections to Raise $50 Million - Bloomberg


註4:Facebookでずいぶんと一緒に仕事をしていた

"The way that Silicon Valley works is that the best of these companies, like Facebook, end up being places where people learn how to build stuff," said Matt Cohler, a Quora board member who manages Benchmark's investments in the company. "I've known Adam and Charlie for several years. I worked with them fairly closely at Facebook."

Quora Taps Thiel and Facebook Connections to Raise $50 Million - Bloomberg

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