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新しくなったJoost、迷走する動画配信ビジネスの台風の眼になるか?
先日、その存在を忘れていた動画サービス「joost.com」から突然メールが来て、「Flash Playerだけで見られるようになりました」と言う。2007年に専用アプリケーションでサービスが始まって話題になった時に登録していたのだが、1年で様変わりしたようだ。
早速アクセスしてみると洗練されたデザインで、数十種類のコンテンツが確かにFlash Playerだけで見ることができた。だがこれではYouTubeと何も変わらない。情報が少ないのでいろいろ探ってみると、日本から見えているのはStandardと称するサービスで、YouTubeと同じくFlash動画をProgressive Downloadで見せているだけのもののようだ。
Joostの特徴はRegion管理、DRM保護、P2P配信の3つだったはずなのだが、それらは当面米国のみのサービスになるらしい。この原稿を書いている段階ではまだ確認が取れていないが、アメリカのIPから入ると有名なテレビ番組など違ったものが観られるようだ。ブラウザプラグインでPtoPを行っているようだが現段階で詳細は不明。DRMについても同様に詳細がわかっていない。
JoostはYouTubeのように玉石混交、清濁混じり合ったコンテンツのおもちゃ箱ではなく、iTunesのようにコンテンツ販売を前提にしたサービスでもなく、これまでの地上波テレビのビジネスモデルをそのままインターネットにもたらそうとしている。
Region管理はまさにその象徴で、既存のテレビ局や映画会社に安心感を与えている。一方DRM保護やPtoP配信はインターネット特有の技術だが、これらも目的は既存のビジネスを運営している人々が安心してインターネットの世界に入れるようにする基盤と言える。
既存のテレビではコンテンツは原則として一方的に垂れ流され、その再利用はきわめて限定的であった。これをインターネットでデジタルファイルとして配信する場合は、その二次利用を何らかの形で制限する必要がある。それがDRMだ。電波を使った放送による配信であるテレビに対して、ストリーミングや通常のダウンロード方式の配信では送り手のコストが過大になりビジネスとしての採算が取れない。PtoPはそれを解決する有効な手段になり得る。そしてPtoP配信でも有効なDRMが必要とされている。
9月29日のCNET Japanの記事でAmazon.comのオンデマンド動画サービスから動画を無料で保存できる状態になっていたことが報じられている。AmazonはAdobeのFlash Media Server 3.0を使って有料で映画やテレビ番組の動画のサービスをしているのだが、Adobeのソフトウェアのセキュリティホールによって、特定のキャプチャソフトウェアで自由に保存ができてしまったということだ。Adobeはストリーミングの性能を重視したためにセキュリティの実装が甘くなってしまったことを認めているようだ。
動画コンテンツを不正な利用から保護しようとした時、従来からのソリューションの1つはストリーミング配信である。デジタルコンテンツをダウンロードさせるからいろいろな不正な処理がされるのであって、ストリーミング配信すればその危険性が少なくなくなるというものだ。
しかし現在ではストリーミング配信されたコンテンツを保存するソフトウェアは巷に溢れており、もはや安全とは言いがたい。これは先に述べたAmazonの例で改めて証明されてしまった。もちろん、ダウンロード(Progressive Downloadも含む)される場合よりも不正利用の可能性が低いということは事実だが、ストリーミング配信していれば安全とは決して言えない。
ストリーミング配信がより安全だという理由で、多くのコンテンツが必要以上の配信インフラを使っている。このために、最近では米国のComcastのようにユーザーの利用する帯域を制限しようとする動きもあり、一層デジタルコンテンツが持つ本来のダイナミズムが阻害されようとしている。
適切なDRMで保護されていれば、デジタルコンテンツの配信方法は何であってもいいはずであるのに、現状では代わりに配信方法が制約を受けている。最近はPtoPによるコンテンツ配信も広く使われようしているし、DVDやBDなどによるオフライン配信も盛んだ。デジタルコンテンツの配信にストリーミングが使われていたり、大規模なCDNが利用されていたりするのは適正なDRMの欠如が一つの原因かもしれない。
複製が容易で、複製されたコンテンツの品質が劣化せず、しかもその配布も容易だというデジタルコンテンツの特性から、デジタルコンテンツをビジネスにしようとする場合、DRMは避けて通ることができない。そしてDRMはデジタルコンテンツの特性を制限することになるため、ユーザーの利便性を間違いなく損なう。この矛盾をどう解決するのかがまさにデジタルコンテンツの本質でもある。
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