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TECHNOLOGY @WORK 東京 2012レポート
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ニコニコ動画とAR(現実拡張)技術が可能にする「ニコニコ現実」という未来 - (page 3)
「ニコニコ動画」から「ニコニコ現実」へ
先日講演させて頂いた「OGC 2008」というカンファレンスでは、ちょうど鈴木健さんと山口浩さんがARについての講演をされていました(参照:「ジョジョ」のスタンドも現実に?--AR(現実拡張)技術の最新事情)。ARというのは、アニメ『電脳コイル』に描かれた世界のように、特殊なメガネをかけると、現実の風景の上に仮想世界の映像が組み合わされる、といった技術のことです。講演では竜安寺の石庭を舞台にして、ダース・ベイダーのCG(コンピュータ・グラフィックス)を使ったゲームを行うといった実例が紹介されていました。
しかし、もっと違う使い道がARにはあるのではないか。というのも、ARはCGを表示するだけではなく、コメントを表示するのに向いているのではないかと、私は思ったんですね。つまり、ニコニコ動画のような文字を現実空間上に表示する技術として、ARが使われていく可能性があるのではないか、ということです。
先ほどの「大仏の額に『肉』」という例でもいいのですが、ほかにも、「街中のちょっとおかしな看板にツッコミを入れる」というような使い方が考えられます。昔、雑誌の『宝島』にあった「Vow」という読者投稿コーナーを、現実空間上でやってしまうというイメージですね。おそらく、ある特定のコミュニティ・サービスに参加した人のメガネにだけ、バーチャルな看板が見えるようになるのでしょう。これはけっこうありうる未来像なのではないかと思います。
そもそも看板というのは、現実空間上に存在する「文字メディア」ということができます。そしてAR技術によって、現実空間上に文字を重ねて表示することができるようになれば、看板が「CGM(消費者生成メディア)化」する日もいずれ訪れるのかもしれない。……このように考えると、「ニコニコ動画」の行き着く先は、AR技術と掛け合わせた「ニコニコ現実」といえるかもしれません(笑)。
これは余談ですが、「ニコニコ現実」の可能性を垣間見せる事例はすでに存在しています。たとえば、最近ネット上で話題を集めたものの1つに、「聖地巡礼」と呼ばれる現象があります。これはアニメやゲームの中に、実在する場所をモデルにした街や風景が登場していて、そこにファンがたくさん訪れているというものです。「らき☆すた」の鷺宮神社や、「ひぐらしのなく頃に」の白川郷などが有名ですね。ニュース記事でも報じられているので、ご存知の方も多いかもしれません。
実は私も、岐阜県の白川郷まで「巡礼」してしまったクチなのですが(笑)、そこには「ひぐらしのなく頃に」の中で「古手神社」と呼ばれている神社があります。その神社は、白川郷にあるとはいえ、基本的には普通の町中にある神社に過ぎず、「世界遺産・白川郷」に訪れた観光客のほとんどは見向きもしない場所です。しかし、ゲームの中では大変重要な場所になっているために、多くのファンたちが「聖地巡礼」をする場所になっています。そこで、とても面白いことが起きていたんですよ。
神社には神様にお願い事をするために書く「絵馬」というものがあるわけですが、「聖地」を訪れたファンたちは、その絵馬にゲーム内に登場するキャラクターの絵を描いたり、台詞を書いて奉納したりしているんですね。絵馬に「東京から来ました」と書く人もいれば、ゲーム内のキャラをセリフつきで実に見事に描いている人もいて、ちょっとした同人誌のような状態になっています(笑)。つまりここでは、絵馬という現実空間上のメディアが、ニコニコ動画におけるコメントの役割を果たしているといえます(動画2)。
これはメディア論的に見ても興味深い。というのも、もともと絵馬というのは、神様へのお願い事をするためのコミュニケーションメディアだったわけですね。しかし、いまやそれはユーザーが現実空間上にコメントを残すための、「小さなCGM」としての役割を担わされているわけです。
このように、ニコニコ動画の出現は、少なくとも日本における情報社会の未来像を書き換えつつあるといっても、過言ではないと思います。たとえば「ユビキタス社会が到来する」ということが言われて久しいのですが、これまで具体的にイメージされていたのは、「街を歩いていると、自分の趣味嗜好に合ったお店の情報が推薦される」といったものが多かったように思います。Amazon.co.jpなどに見られるリコメンデーションサービスの現実空間版ですね。しかし、今後ユビキタス社会は、「どこでも現実空間上でニコニコ動画的なコミュニケーションができる社会」へ向かうのではないか、という気がしています。(談)
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