Macユーザーが注ぐアップルへの深い情熱--その源を探る - (page 2)

文:Tom Krazit(CNET News.com) 翻訳校正:藤原聡美、緒方亮、大熊あつ子、佐藤卓、高森郁哉2007年12月21日 17時16分

 こうした熱狂のルーツは、Appleの財務状況がきわめて危うかった時代、そして、ユーザーがMacを使って仕事をするとほかのコンピュータユーザーにばかにされた時代にあるのだろう。10年前、ビジネスでMacを使っている人は、まともな仕事には使えない「おもちゃ」で遊ぶ世間知らずだとみなされた。また、初代のMacが1980年代に約束していたイノベーションは、Microsoftのソフトウェアによって実現しつつあるのだと、Macコミュニティーにはっきり指摘してやろうと手ぐすね引いている人々がたくさんいた。

 Appleは、そんな風潮を変えるべく対応に乗り出した。同社は自社のメッセージとしてスピリチュアルなモチーフをあえて選び、1990年代半ばにGuy Kawasaki氏を招いて活動を始めた。もともとKawasaki氏は、1980年代半ばからAppleのマーケティングに携わり、1987年にAppleを去るまでMacの普及に取り組むチームに参加していた人物だ。

 Kawasaki氏がAppleに復帰した1995年、同社はおそらく最悪の状態にあった。Kawasaki氏は自身のサイトで、1990年半ばのAppleにおける自身の役割について触れ、「この時期の私の仕事は、Macintoshのカルト文化を維持し、再び活発にすることだった」と語っている。当時、Macをなお信じ、MacがWindowsに取って代わる可能性を疑わない献身的な人々はいたものの、つながりもなく士気も低かった。

 Kawasaki氏は12月に入って行われたインタビューの中で、1995年当時、「EvangeList(エバンジェリスト)」といううってつけの名前をつけた自動管理のメーリングリストに筋金入りのMacユーザーが4万4000人も参加したことを振り返った。「私がやろうとしたのは、よいニュースを広めることだけだった」とKawasaki氏は語っている。Kawasaki氏はこのメーリングリストを、奔流のようにMacに押し寄せる悪いニュースの対極に位置するものにしたいと考えていた。悪いニュースの代表格が、「BusinessWeek」誌が1996年に掲載した「米国の偶像の没落(The Fall of an American Icon)」というApple特集記事だった。この号の表紙には、葬式を思わせる黒を背景に、Appleの象徴であるリンゴのマークが描かれていた。

 Kawasaki氏の狙いは、Macユーザーはひとりぼっちではなく、歴史の正しい側に立っているのだという希望を与えることだった。追いつめられた者にとって希望は大きな力だ。こういう言い方は少し大げさかもしれないが、これが当時の多くのMacユーザーの気持ちだった。

 CNET News.comの読者であり、GovStarでシステム工学担当バイスプレジデントを務めるカリフォルニア州サクラメント在住のDoug Otto氏は次のように話している。「まるで宗教体験のようなもので、『救済のため』にあらゆる知人に伝えて回らなければと感じるようになるんだ。まともじゃないし、私にはまったく理解できない人々だ。ところが、今では自分がその1人になっている」

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