さらに、買収が新たな閲覧者獲得につながることもある。Discovery Communicationsは、TreeHuggerを買収することで、単に同社の新チャンネル「Planet Green」向けのブログ以上のものを獲得したはずだと、mediabistro.com内のブログ「FishbowlNY」で記事を書いているNeal Ungerleider氏は指摘する(mediabistro.comは2007年7月、Jupitermediaに買収された)。
「TreeHuggerはすでに相当数の読者を抱えている。また、経験豊かな社内スタッフもいる。したがって、素晴らしい才能を持つスタッフと、単に自社の新聞や雑誌にブログを掲載しただけでは得られない読者層を獲得したことになる」とUngerleider氏は語った。つまり、無名の人物を起用して制作資金を節約するのではなく、大金を出して著名なニュースキャスターを獲得するニュース局と同じような戦略をとっているということだ。
しかし、残念ながら、既存ユーザーが大手メディアの思惑通りの反応を示すとは、必ずしも限らない。このことは、MySpaceがNews Corp.に買収されて以降、同サイトにNews Corp.会長のRupert Murdoch氏をかたる偽プロフィールがどれだけたくさん登場したかを考えてみればわかるはずだ。また、コメントを見る限り、やや左寄りの傾向があるTreeHuggerの訪問者たちの間でも、大手メディア企業による買収への見解は分かれている。ある人は「たとえ今のところはDiscoveryがこのサイトにうってつけのパートナーだとしても、この先、Rupert Murdoch氏などの極端な保守主義者に買収されるリスクはある」と書き込み、「支配権を大企業に譲り渡してしまったら、何が起こるかなど誰にもわからない」と付け加えている。また、別の人は、次のように問いかけていた。「確かに、Discoveryの力を得れば(TreeHuggerの)メッセージをさらに広められるだろうというのは、わたしにもわかる。だが、そのメッセージに心はあるのだろうか?」
買収合戦に浮かれるメディア企業に1つ忠告するなら、新たに獲得した資産には余計な手を入れずに買収前の状態に保て、ということだ。
KaboodleのChandra氏は次のように述べている。「みんな(学んだ)のだと思う。ハイテク企業の側も学んだだろうし、大規模なメディア企業は間違いなく教訓を得ている。われわれが話を聞いた誰もが、開口一番『心配しなくていいよ。君の会社はそのまま手つかずにしておくから』と言った。それが最初の確約だった」
すべてが計画通り行けば、そうした不介入のアプローチを用いることで、買収に乗り出した大企業は、既存ユーザーを怒らせることなく、新たな買収先を広告や情報インフラの基盤として利用する道が開ける可能性がある。
「特にソーシャルメディアサイトの場合は、サイトを発展させ、有力サイトにまで持ち上げる原動力として、巨大なコミュニティーが存在する。Kaboodleの場合、ここまで発展できたのはすべてユーザーのおかげであり、だからこそ、コミュニティーに余計な介入を許さないことは非常に重要だ。このようなソーシャルコミュニティーの構築には魔法のような力が働くもので、しかも、その魔法は簡単に模倣できるものではない」と、Chandra氏は述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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