このサービスに関するGoogleのビジョンは、「人々に実際の道路の様子を紹介し、地図に引かれた線よりも現実的で役に立つものを作る」ことだとWong氏は語った。道路レベルのビューは、休暇で訪れる予定の都市を下見したり、家を買う前に近所の様子を調べたり、車を運転するときに方向を知るためのビジュアルな参考情報としても役に立つ(Wong氏)。
確かにその通りだが、「犠牲にしなければならないものもある」と指摘するのはUniversity of Florida's Levin College of Lawの教授Christopher Slobogin氏。「この種のものは、多くの人々が欲している。手に入れるためなら、少しばかりプライバシーを犠牲にしても誰も気にはしない」
ジョージワシントン大学の法学部教授Daniel Solove氏も、気にしない1人である。
「矮小化するつもりはないが、大げさに言うのもどうかと思う。Street Viewは興味深い問題をいくつか提起している。しかし最終的には、そのせいで不安のあまり夜眠れなくなったり、激怒したりするたぐいのことではない」(Solove氏)。「Googleは自身の行動に少しは慎重になるべきかもしれないが、もっとひどい例はこれまでにいくらでもあった」
しかし、ある人にとっては便利なオンラインツールでも、自分の顔や車のナンバープレートや一挙一動がGoogle Mapsに表示される人にとっては、不安の種である。
「かつては、離婚の記録は公開されていても、裁判所に行かなければ見ることができなかった。ところが今はウェブ上に公開されている。同じように、近くの通りまで行かなければ自分の家を見ることはできなかったが、今は地球上どこからでも見ることができる」と指摘したのは、インターネット関連のセキュリティ対策会社BT Counterpaneの最高技術責任者(CTO)でプライバシーやセキュリティについて幅広く著作活動を行うBruce Schneier氏である。
「今はウェブ上に公開されていて、誰でもたえず見ることができる。そこが違いだ」(Schneier氏)。「そこには、我々が1つの社会として取り組む必要のある深い哲学的なプライバシー上の懸念が存在する」
最終的には、技術の進歩によって提起される問題に対処できるよう法律を修正するべきであるという点でSchneier氏、Wong氏、法律の専門家の意見が一致した。これまでにも、新しい発明はプライバシーに関する法の制定に向けた原動力となっている。デュケイン大学の憲法を専門とする教授Ken Gormley氏によれば、たとえば、19世紀末の写真の誕生と新聞の流通拡大を契機として、個人間のプライバシーを保護する米国初の法律が生まれた。
「これは国の立法府の議員が取り組まなければならないたぐいの問題だ」とGormley氏は指摘した。その一方で、政府が市民のプライバシーを侵す行為は、憲法によって保護されている。
「結論を言えば、公共の場にいるときは誰もが格好の餌食だ」(Slobogin氏)。「それがある人の生活のある瞬間を撮影したランダムなスナップショットにすぎないのならば、我々は我慢するしかない」
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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