一方でライブドア在籍時にブログ運営に携わった伊地知氏は、このようなネットIDの仕組みの実現可能性は低いと見ている。
伊知地:まず、業者みんなが足並みを揃えるかというと、それは難しいと感じます。自社のサービスで囲い込むという意識があるので、協力関係がなかなかできにくい。そこまでの強制力がある業界団体がないんじゃないですかね。
私はネットIDに賛成なんです。やっぱり誹謗中傷はあってはいけないし、防がなければならないので、その方法は考えなければいけないと思っています。
それがないと、犯罪を防ぐというよりもネットの発言の地位が上がってこないと思います。だからそういった意見には全部賛成しているんですが、世界中に網を掛けるような仕組みを考えなければいけないのでなかなか難しい。
佐々木氏は自らの取材の経験上、ネット側から何らかの仕組みを考えなければ、将来的により厳密な規制を受ける可能性もあるという。
佐々木:インターネットの現状を見ると、一般社会も完全に混乱していて、匿名だから誹謗中傷を受けるとみんなが思っているわけですよ。それでインターネットがけしからんという新聞社のキャンペーンも始まったりして、総務省とか検察庁あたりが動き出したりする可能性がすごく大きい。このままの状況が進むと、たぶん遠からずネットも強制的にID化しなければいけない、という話になってくる可能性が高い。
そうなると、いわゆる政治的な圧力によって業界が動かざるを得なくなって、例えばネットID協会みたいなものを作ってそこで一括管理しましょう、お金はプロバイダ各社から幾らかずつ集める、みたいな話になってくる可能性がある。
そうするとコストの問題じゃなくて、政治的な圧力で動き出す可能性があるということは言えると思います。
その場合に、恐ろしいことに、ものすごいがんじがらめの規制になってしまう可能性があるわけですよ。そうじゃなくて、匿名言論を確保したまま、ネットIDみたいなミニマムのトレーサビリティだけを確保する方向に理論武装していかなければいけなんじゃないかと僕は現実問題として考えるんです。
ネットIDと言っても、たぶん人によって捉え方が違いますよね。ものすごくきちんと網の目を掛けてしまうのか、最低限法的な問題が生じたときだけに対応するのか、その段階によって違ってきます。完全に匿名言論を失わせる形ですべて実名で、僕の戸籍の名前がボンと出るというふうにしろという話になる可能性だってあり得るわけですからね。
それがどういうアーキテクチャになるのかはそのときにならなければわからないですが、このまま放っておくと厳しい方向に行ってしまう可能性は十分にある。
ネットIDの必要性については、目的や経緯は異なるものの各々が賛成意見を持つ。だが具体的な仕組みをめぐっては意見が分かれる。なかでも小倉氏の考え方は、ユーザー側にもある程度の責任を持たせようというものだ。
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