第1回:なぜ“異例づくめの研究会”は開催されたのか

 「ケータイ先進国日本」に暗雲が漂っている。

 国内ではすでに当たり前となった携帯電話によるメール送受信やサイト閲覧ができる「ケータイ文化」は、世界の追従を許さないところまで発展している。しかし、今のところ海外ではそうした習慣を受け入れられる通信インフラは十分に整備されておらず、ケータイ文化の形成を下支えしてきた日本の携帯電話関連ビジネスは、世界市場から孤立してしまった。

 国内においても、通信料金の25%を占めるに至った多額の販売奨励金や、端末の自由な選択を阻害するSIMロックなどの問題が提起され、携帯電話業界に改革を迫っている。国も産業構造の改革に本腰を入れ始めた。

 「ケータイ先進国」であるはずの日本が抱える問題とは何か。解決策はあるのか──。世界進出できないモバイル業界の内情を探った。

■中国市場から国内メーカー相次ぎ撤退

 日本の携帯電話は、PHSを合わせた契約数でついに1億件を突破した。しかも、ネット接続機能の対応率は世界最高となる94%以上。これほどネットにつながる携帯電話が普及している国は、同じく90%前後の韓国を除けばほかにない。

 コンテンツ・広告分野でも携帯電話の伸びは著しい。市場創成期を過ぎた現在でも、携帯電話向けコンテンツは毎年40%以上の成長を維持。広告は前年比34%以上の伸びで、ネット広告全体の伸び(約29%)を上回った。さらには、「おサイフケータイ」やQRコードを活用した「リアル連携」の分野でも、日本の携帯電話は、世界に類を見ない「ユビキタス市場」を創造しつつある。

 しかし、こんなにも優れた日本の「ケータイ」が、世界ではまるで存在感がない。

画像の説明 通例、ドコモFOMAの通常ラインナップでは納入メーカーの名称が外装に入ることはない。しかし世界的ベストセラーのモトローラ「MOTORAZR」では、ドコモはメーカーとの「ダブルネーム」を許した。

 日本の携帯電話メーカーが1年間に生産する端末の合計台数は、世界シェア1位のノキアがわずか3カ月に生産する数にも及ばない。スウェーデン企業と合弁したソニー・エリクソン(世界シェア4位)を除けば、日本メーカーの世界シェアは、各社とも統計誤差ラインの1%前後をさまよっている。

 携帯電話の1台あたり単価は生産規模と密接な関係がある。そのため、グローバル規模での市場占有率に比例して製造コストを下げることができる。現在、世界の携帯電話機メーカーは、世界最大の人口を抱える中国に「低コスト」を武器として殺到しているが、国内メーカーは2005年以降、この世界最重要とも言える中国市場から、東芝、松下、三菱電機、NECと、相次いで撤退を余儀なくされた。

 これまで、「高価格・高機能」な端末をNTTドコモなど携帯電話キャリアに「納品」することで販売や在庫のリスクを回避してきた国内メーカー。この国内メーカーとキャリアによる特殊な相互依存関係こそが、低コスト端末が重視される昨今の世界市場で、日本が競争力を失っていった要因に挙げられている。

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