IT企業を揺るがす「バックデート事件」--S・ジョブズ氏はなぜ擁護されるのか? - (page 3)

文:Tom Krazit(CNET News.com) 翻訳校正:DNAメディア2007年02月14日 20時05分

 Apple取締役会の構成メンバーは7人、この規模の企業としては比較的小さい。Jobs氏以外のメンバーも、GenentechのCEOを務めるArthur Levinson氏、Intuit会長のBill Campbell氏、GoogleのCEOであるEric Schmidt氏、かつてGapのCEOを務めたMillard Drexler氏、元IBMのCFOで現在は投資企業Harwinton Capitalを率いるJerry York氏という華やかな顔ぶれで、いずれもサンフランシスコベイエリアの有力者である。

 しかし、この取締役会で一番の有名人は、ドキュメンタリー映画「不都合な真実」に出演し、「情報スーパーハイウェイ構想」でインターネットの普及を刺激した、元米副大統領Al Gore氏だろう。Gore氏は、調査委員会の共同責任者をYork氏とともに務め、バックデート問題の調査で中心的な役割を果たした。議決権行使サービスを提供するInstitutional Shareholder ServicesのPatrick McGurn氏は、Gore氏の政治的野心は消えていないように見えるし、この問題に対して同氏が公平な立場をとったということは、Gore氏は同取締役会の全面的な支持を得ているのだろう、と言う。

 一方スタンフォード大学のLarcker氏は次のように語っている。「最終的には、取締役たちのプロ意識が求められる。つまり、『これは完全にアウトだ』と思うものを、それぞれの取締役自身が考えなければならない」

 取締役会がこうした意思決定を行うに当たっては、一般の意見にも配慮しなければならない。だが、「取締役会はJobs氏にもっと決然とした態度で臨むべきだ」と言うAppleの顧客や株主はいるだろうか。「『CEOの解任は株主の不利益となる。問題が刑事事件として立ち上がってこない限りは現在の方向性を貫く、これが私たちの方針だ』と取締役会が言ったとしても理解できる。場合によっては、こうした情報戦の方がずっと難しいこともある」とMader氏は話している。

 実際、Appleに身をささげてきた熱心なファンが、Jobs氏がしたかもしれないこと、あるいはしなかったかもしれないことを問題にするとは思えない。財務アナリストは、Appleの内部調査にJobs氏の潔白を証明する以上のことは求めていないし、投資家にとっても、Jobs氏がAppleにとって唯一無二の存在でいてくれることが重要なのだ。

 「取締役会が現時点でJobs氏を解任したら、彼らが訴えられる可能性は、同氏を解任しなかった場合よりも高くなる」とMcGurn氏は指摘する。

 だとすると、どのような策を講じるにしても、Appleの取締役会への圧力がほぼ見られないのは当然だろう。

 「Jobs氏の不正行為をはっきりと証明する証拠を調査委員会が見つけない限りは、取締役会が彼を見逃す公算は大きい。取締役会は、当局が自分たちと同じ結論に達することをひたすら祈っているのだろう」(McGurn氏)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ

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