Windows開発責任者J・オールチン氏、Vista発売までの悪戦苦闘を振り返る(前編)

文:Ina Fried(CNET News.com) 翻訳校正:中村智恵子、緒方亮、長谷睦2007年02月02日 08時00分

 ワシントン州レドモンド発--マジックミラーの向こう側で、白髪の男性が「Windows Vista」内の音楽共有ライブラリにアクセスしようと奮闘している。

 「わからない」と男性は言う。「まずいことになった」

 マジックミラーの反対側では、Microsoftの幹部数名が男性にトラブルからの抜け出し方を伝えようとしている。Microsoftのユーザビリティーラボでは、これまでにたくさんの人が同様のテストを受けている。しかし、米国時間2006年2月1日、ユーザビリティラボのある28号館にいたこの男性は、ランダムに選ばれたベータテスターの1人ではない。Windows開発のボス、Jim Allchin氏だ。

 当時、Allchin氏には不満の種が山ほどあった。Windows Vistaは何カ月もテストが行われていた。Microsoftは、Vistaを何とか2006年のホリデーシーズンまでに店頭に並べようと、すでに大々的な仕様変更を始めていたが、同社自身、まだたくさんのバグが残っていることはわかっていたという。2006年2月にAllchin氏が試した時点で、「Windows Media Player」と「Internet Explorer」の最新版は、前回、研究所を訪れたときと比べて改善されていたが、Vistaのそのほかの部分はいまだに同氏をいらだたせる状態だった。

 それからおよそ12カ月が経った。Microsoftは2006年、Vistaの発売を再び延期し、2007年の初めにせざるを得なかった。5年間の開発期間と、膨大な数のテスターからくる終わりのないフィードバックの結果だ。しかし、Allchin氏が不満としていた問題の大部分は解決された。

 いよいよ、一般消費者向けにVistaの準備が整い、2007年1月30日に店頭販売された。その翌日、Microsoftで17年を過ごしたAllchin氏は、予定通り退任した。

 Allchin氏がMircrosoftで関わった最後の製品が、後代にどのような影響を与えるかはまだ明らかではない。いまのところ、このOSの評判は芳しくないが、Allchin氏は、Vistaが前バージョンのWindowsから著しく改善されていることが、時とともに明らかになるだろうと語った。

 1年前にAllchinを苦しめていた最大の問題の1つである、Vistaのネットワーク機能がいい例だ。現在はユーザーが新しいネットワークに接続すると、HomeかWorkかPublicかが確認され、答えに基づいてOSはファイアウォールなどの設定を自動で行う。これは、初期のテスト時とはまったく違っている。

 「18カ月前などを振り返ってみれば、ネットワーク機能は複雑すぎてとても理解できる代物ではなかった。あのころ、わたしはXPのときよりも出来が悪くなることを覚悟していたが、現在では劇的に良くなっている」とAllchin氏は1月第3週に行われたインタビューで述べた。

 セキュリティ、検索、写真、音楽--すべてが非常に改善されていると同氏は語っている。

Longhornのビジョンはどこへ

 しかし、Microsoftの外からは、Vistaはもっと素晴しいものになる可能性があったのではないか、との声が多く聞かれる。その際に引き合いに出されるのが、Microsoft会長のBill Gates氏が2003年10月に「Professional Developers Conference」で披露した、次期Windowsのもととなるビジョンだ。この時Microsoftが示したまったく新しいWindows(当時のコードネームは「Longhorn」)の方向性は、開発者たちをうならせた。その中心にあったのは、ファイルシステムの刷新、およびWindowsの基幹部分にかかわる大胆な変更だった。カンファレンスの最後には、「The Goods」とだけ書かれたスマートな黒いパッケージに入ったLonghornの初期のテスト版が、開発者たちに渡された。

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