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うつ病に効くオンラインゲームの世界

上海さくら 2006/05/01 10:45

 私がそのオンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)「トリックスター+」に出会ったのは、いまから1年近く前の、2005年6月のこと。私がうつ病で何をするにも気がめいってしまい、家から一歩も出られなくなったことを心配した友人の「しおん」が、家の中ででもできることとして、勧めてくれたのが始まりだった。

 しおんには、「家にいるなら一緒に遊んでみないか」と言われた。やってみたら、それが意外に楽しかった。

 それまで私は、オンラインゲームなんてやったことがなかった。ゲームも、うつ病になってから、久しぶりに家にしまっていたプレイステーションを引っ張り出したくらい。ただ、そのときたまたま中古で買ってあったRPGのソフトをやって、それまで何をするにも10分も持続すればいいほうだった私が、ほとんど何も食べないで14時間もプレイできたことは覚えている。夜にゲームを始めて、次の日の朝まで。その時、自分がゲームを好きだということには気付いた。なぜならそのとき、「面白い」という感情が初めて戻ってきたから。

 でも、そのオンラインゲームを初めてやったときは、8種類いるキャラクターの区別がつかなかった。自分のキャラクターさえどれだか分からなくて、ゲーム内の周りの人にからかわれたりもした。

 わたしは仕事や家庭のことなど、いろいろなことが積み重なってうつ病になった。だんだん動くことが辛くなって、そのうち布団をかぶって、何をするわけでもなくぼーっと時を過ごしていた。「生きていてもしょうがないかな」--そんなことを考えながら。

 でも、ゲームを始めてから、「ゲームをやるためにがんばろう」と思えるようになった。それから、「アイテムを買うためにがんばろう」「ゲーム内のイベントの日までがんばろう」と、小さな目標に向かって生きられるようになった。

 今思えば、私はとてもラッキーだった。まず、自分がたまたま選んだキャラクターが、初心者でも戦闘で死ぬことが少ないものだったこと。すぐ死んでしまうようなキャラクターだったら、私はきっとすぐ嫌になっていただろう。

 それから、出会った人に恵まれたこと。まだ初心者でゲーム内をうろうろしていたときに、アイテムがフィールドにたくさん落ちていて、そこにいた上級者の人が「全部持って行っていいよ」と言ってくれた。ほかにも、困っていると手を差し伸べてくれる上級者の人がたくさんいた。

 ゲーム内でトラブルらしいトラブルもなかった。もちろん、考え方の違いでほかのプレーヤーと言い合いになることはあったけれども、それはきっとゲームじゃなくても、どこにでもあることだ。

 うつ病になると、人の目が見られなくなる。だから、買い物にも行けない。でも、ネット上なら人に会わなくても、買い物ができる。チャットなら喋れる。それがすごい気楽だった。自分の顔の表情がうまく作れなくても、笑顔マークなら笑っていることになれるから。

 それから、うつ病の症状のひとつに「早期覚醒」というのがあって、朝の3時くらいに目が覚めてしまう。普通ならふとんの中でぼーっと時間を潰してたけれど、ゲームを始めたことで「よし、いまのうちにレベルを1つあげちゃおう」と思えるようになった。早朝に起きてしまった自分を責めなくなって、「起きても平気だ」って思えたら、そのうち起きなくなった。気にするのが一番よくないそうだ。

 逆に、そんな時間じゃないとゲームの中で会えない人もいた。そういう人たちに会えるかなと思うと嬉しかったし、そんな時間にいる人は本当にゲームが好きな人だから一緒に遊んでいても楽しかった。

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