もちろん、取得費用はアナリストの決まり文句になっている総所有コスト(TCO)の一部に過ぎない。ドキュメントの変換、アプリケーションのテスト、社員教育、新しいデスクトップOSの導入にはかなりの費用がかかるだろう。それでも、これらは一度払えば済むものだ。こうした移行コストにはデスクトップ1台あたり90セントくらいかかると見ておけばいいだろう。このくらいのコストであれば、最初の1年で元が取れる。そして、その後は、しこたま節約できる。それに、年間50ドルで最新かつ最高のLinuxデスクトップが手に入ることも忘れてはならない。Windowsでは次期バージョンが出るのはだいたい3年後くらいだ。ユーザーはそのたびに全面的アップグレードを迫られる。
Novell1社だけでLinuxデスクトップ市場を牽引するのは無理だが、Novell以外にも多数の企業がLinuxデスクトップ市場への本格的な進出をもくろんでいる。IBMがLinuxを宣伝し、懇切丁寧な移行サービスを提供すれば、市場を大きく動かすことができるに違いない(IBM、Lotus、Novellの3社が動けば、Linuxデスクトップの逆襲は成功するのではないだろうか)。MicrosoftとOracleの間には失うと困るような関係は何もないので、Larry Ellisonもこの話に乗ってくる可能性がある。IntelとAMDはPCが売れればよいのだから、Linuxだろうが何だろうが大歓迎だろう。
市場が充分に成長すれば、Dell、Hewlett-Packard、Acer、Gateway、LenovoなどのPCメーカーも、Linuxデスクトップマシンの販売を始めるだろう。
Linuxデスクトップでは、iTuneはまだ動かないし、サポートされていないアドオン機能も無数にある。しかし、「仕事で使う基本的なツールとブラウザがあれば充分」というユーザーであれば、そんなことはまったく気にしないだろう。とりわけ、コスト軽減を重視し、Microsoftとのしがらみもない開発者の世界では、Linuxでまったく問題ない。
もう1つ、Microsoftにとって皮肉な結果になったことがある。Microsoftは今年、OSを「Vista」にアップグレードしてもらうための宣伝費用に5億ドルを投じることになっている。これはLinux陣営にとって、各社のCIOにLinuxを評価し、Vistaと価格を比べてみるよう説得する絶好の機会となる。このやり方で、Microsoftは、敵に塩を送る結果となるだろう。
VistaがXPよりもはるかに優れたOSになる可能性は大いにある。しかし、ユーザーはそれを本当に必要としているのだろうか。そうかもしれない。しかし、充分な機能を備えており、Windowsの1割の価格で購入できるLinuxデスクトップとOpen Officeに移行したほうが賢明であると判断するCIOも多数出てくるのではないだろうか。
筆者略歴
Jon Oltsik
Enterprise Strategy Groupのシニアアナリスト
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