ただし、こうした消費者によるトラフィックの大量消費となれば、いまの仕組みでは吸収できない。したがって、市場構造がいまのまま保たれることはないだろう。寡占化が進み、大手企業においてはレイヤ間をまたがる垂直統合的なビジネスモデルを追求するようになるだろう。
もちろん、(コストが高くつくので)当該企業のみで何もかもできないため、部分的な水平分業も同時に行われる。こうして市場の再編が促される。
寡占や独占的な状況による弊害が認められるような場合は、規制当局の出番だ。しかし、大半のことは市場が機能するようにのみ働きかければよい。国が成すべきことは、国富の増大につながる政策を掲げるべきだ。そして、それはこれまでのような単なる競争そのものを目的とするような競争政策ではいけない。ある種の産業政策的な要素も加味せねばならない。
情報通信産業というミクロの場でプレイする事業者を、いつまでたっても逆風下(デフレ)に置いてはならない。順風状態にマクロ環境を整えることが国の役割だ。1990年代の米国のクリントン政権は、それに近い状況をつくった。わが国の情報通信産業の発展には、こうしたミクロとマクロの両方の視点がきわめて重要である。
「インフラただ乗り論」を巡る問題は、こうしたことを投げかけているように筆者には映っている。
筆者略歴
新保 豊(主席研究員、通信メディア・ハイテク戦略クラスター長)
日本総合研究所で通信メディア・ハイテク分野での経営戦略などの策定・コンサルティングを担当している。
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