「草の根ビデオ広告」に便乗する大企業の期待と課題 - (page 3)

文:Elinor Mills(CNET News.com) 翻訳校正:坂和敏(編集部)2006年04月13日 08時00分

 最近では、ユーザーの手になるコンテンツを利用しようとして、うまくいかなかった例も出ている。General Motorは先ごろ、Chevy Tahoe SUVの自作広告キャンペーンを実施したが、これを利用して同社とその製品を批判する「広告」を公開した人々がいた。このビデオには、岩山を背景に悪路を走行していく車の映像が出てくるが、画面に表示されるメッセージは、地球温暖化を助長しているとしてGMを非難した内容になっている。GMは米国時間3日にこれに対応し、メッセージがネガティブだというだけでコンテンツを削除することはないと回答した。

 「手作り広告は、ブランドイメージをうまく反映したものなら素晴らしい。だが、こうした広告がブランドの反映に失敗することも同じくらい簡単に起こりえる」と、Ammo Marketingという口コミに重点を置くマーケティング代理店の戦略ディレクター、Gary Stein氏は言う。「個人がビデオクリップを制作する環境がますます整っていくなかで、これは一大現象と化している。一部の企業がそれにさらに弾みを付けようとしていることは興味深い」(Stein氏)

 実際に、こうしたトレンドが「Fast Twitch Media」のようなウェブサイトを生みだしている。Fast Twitch Mediaは、ブランドのコマーシャルを制作してみたいと考える人々を対象にした求職情報用の掲示板のような役割を果たすことになっている。このサイトに提出された作品は、デジタルマーケッターの業界団体であるBay Area Interactive Groupが今年から始めたSan Francisco User-Generated Ad Showというイベントで公開された。

 非営利業界団体Interactive Advertising BureauのCEO(最高経営責任者)Greg Stuart氏は笑みを浮かべながら、「このような状況を広告代理店が喜ばしく思っているとは思えない」と語った。

 同氏によると、マーケッターは、大半の広告がユーザー層にうまくアピールできていない状況をなんとかしようと必死だという。「広告や各種の制作物に関してはかなり調査してきたが、広告の約65%には熱意やメッセージ性が欠けていた」(Stuart氏)

 Chevy Tahoeキャンペーンに示されるように、一般の人々をマーケティングに関与させる場合、企業はリスクも負うことになる。進行を台無しにする破壊活動的な要素に加え、視聴者の制作した広告にオリジナルでないものが含まれていた場合、これが著作権の問題を引き起こすことなどへの懸念もあると、複数の専門家が指摘している。さらに、視聴者には消費者としての個人的な経験はあるのもの、彼らがそのブランドや製品のポジショニング、聴衆のセグメントか、企業側のメッセージといった事柄を必ずしも理解するとは限らない。

 「これがトレンドだとは思わない」と、American Association of Advertising Agenciesのエグゼクティブバイスプレジデント、Mike Donahue氏は言う。「広告主は、常に自社のブランドのユーザーを惹きつけるクリエイティブな機会をさがしている。しかし、ユーザーの手になる広告が今後どれほど成功するのか、そしていつまで使われることになるのかといった点は、しばらく先までわからない」(Donahue氏)

 また、ユーザーのつくる広告に期待している人々でさえ、広告代理店が廃業に追い込まれるようなことにはならないと述べている。

 「広告代理店が大金をかけてつくった、Puff DaddyやBeyonceのような人気スターが登場するCMに代わるものはない」とCurrent TVのDecker氏は言う。「ユーザーにはPuff Daddyを雇う金などない」(Decker氏)

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