マイクロソフトの頭上に垂れ込めるWindows Vistaの暗雲

文:Ina Fried(CNET News.com)
編集校正:坂和敏、尾本香里(編集部)
2006年03月27日 15時54分

 Windows Vistaの発売が再び先送りされたことで、Microsoftの直面する課題の大きさが改めて浮き彫りになっている。その課題とは、同社にとって最も重要な製品の最新版を理にかなったスケジュールで出す方法を見つけ出す、というものだ。

 今回の計画変更により、Windows XPが公開されてからWindows Vistaがリリースされるまでに、5年以上の間隔が空くことになる。さらにMicrosoftは、新しいオペレーティングシステム(OS)への搭載を予定していた主要な機能の多くを縮小しなければ、この投入スケジュールでさえ実現できそうになかった。

 WindowsはOS市場での独占的なシェアをほぼ維持してきているが、Microsoftが定期的に製品のアップデートを出せなくなっていることから、同社のキャッシュフローに対するリスクが高まっている。

 「Microsoftはこれから更に大きなプレッシャーを感じるようになるだろう。特に、各種のアプリケーションがOSの違いを意識しなくなったり、あるいはまた特定のOSと結びついた存在ではなくなったりしているため、そうしたプレッシャーがさらに高まるだろう」とGartner アナリストのMichael Silver氏は述べている。

 Microsoftはかなり前から、自社には常に技術革新を続ける必要があると公言していた。同社の幹部らは1970〜80年代にIBMを苦しめた運命を指しながら、当時のIBMは同社より抜け目が無く機敏な競合他社が活動する分野でよろめく巨人とみられていたと指摘した。

 「IBMとは長い付き合いで、同社がやり過ぎるさまを目にしていた」とMicrosoft最高経営責任者(CEO)のSteve Ballmer氏は、2003年に行われたThe Seattle Timesとのインタビューのなかで述べていた。このインタビューのなかで、Ballmer氏はPCの登場当時を振り返り、IBMの動きの遅さがMicrosoftにもたらしたチャンスについて説明し、Microsoftにはそうした運命を避ける必要があると話していた。「われわれが当時のIBMのようになるかどうかはわからない--ただし、われわれは戦略も技術もコントロールしており、財務に関するコントロールも効いている」(Ballmer氏)

 もちろん、危険を認識しただけでは、同じ運命から逃れられるとは限らない。

 Microsoftはいくつかの重要な問題に直面しているが、その1つは新OSの開発に関してプログラミングやテストにかかる時間が長くなっているというものだ。開発面では、同社はソフトウェアのセキュリティを強化するために、何年もかけて開発方法の再設計を行ったが、こうした変更には時間がかかる。その上、新しいコードのテストにかかる時間も増えている(もちろん、テスト用の自動化ツールがいくらか役に立っているが)。同社会長のBill Gates氏は米国時間3月21日に、Vistaの開発に費やした人月のうち、最大で約半分がテストにかかっていると述べていた。

 また同社は、すでに出回っている無数のWindowsマシンをすべてサポートしようとしていることから、そのための課題にも直面している。同社は、最新かつ最も素晴らしいOS上でさえ、最も古いアプリケーションが動くところを誇らしげに披露することも珍しくはない。

 「われわれは、古いアプリケーションとの互換性を非常に大事にしている」と、Gates氏は先週行われたOffice開発者向けのカンファレンスで述べていた。

 それに対し、Apple Computerは、まったく異なるアプローチを採ってきており、自社のOSを現代的なものにする取り組みの中で、古いハードウェアやソフトウェアを切り捨ててきた。その結果、セキュリティ関連の作業範囲も狭められ、テストを行わなくてはならないシステムの数も非常に少なくなった。

 Directions on MicrosoftのアナリストMichael Cherry氏は、Microsoftが置かれた状況はAppleのそれとはいくぶん異なるとしながら、それでもMicrosoftにはAppleに見習うべき点があると述べている。Appleは、Mac OS Xへの切替時に大規模なアーキテクチャの変更を行い、一度打撃を受けたが、その後はもっと小規模ながら目に付きやすい機能向上に重点を置いてきている。

 「Mac OS X登場後は、非常に大きな変更は行われていない。だが、ユーザーはそうした変更を見て、『よくできてる。買ってみよう』と言っている」(Cherry氏)

 同氏によると、現時点ではWindowsの基盤となるアーキテクチャのほとんどの部分に大幅な変更を加える必要はなく、Microsoftは時折アップグレード版を出して、ネットワーク関連のプロトコールなどの機能を追加するだけで済むはずだという。「その他はすべて、表面的な部分の見映えにかかわる作業のはずだ」とCherry氏は言う。

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