ヒップホップがクリエイティブコモンズと出会う時 - (page 2)

文:Daniel Terdiman(CNET News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年03月01日 08時00分

 MillerもMcLeodに同意し、レコード業界が保有する過去の作品の巨大な宝庫をリミクサーに開放すれば、それらの作品の利用が莫大な経済的利益を生む可能性があることを同業界は認識すべきだ、と主張している。

 「過去の作品をただ保存しているだけでは、何の利益も生み出せないことは、少し考えれば容易に分かる」とMillerは述べ、さらに「(音楽業界は)保存している作品の利用を活性化させ、(過去の作品をリミックスやサンプリングに利用するといった)発想を奨励すべきだ」と付け加えた。

 Millerはまもなく「Rebirth of a Nation(国家の再生)」というタイトルの映画もリリースすることになっている。同氏は、一般人がCreative Commonsのライセンスに基づいてこの映画をリミックスすることを認めるつもりだ。

 Copyright Criminals Remix Contestでは、3月14日まで作品の応募を受け付けている。受賞作品は、McLeodとFranzenのドキュメンタリー映画の中で「大々的」に流される。このコンテストは、Jeremy RosierやTre Petersonのようなアーティストにとって、コンテストに出品される作品の題材に適用されるCreative Commonsのライセンスの下で彼らに与えられるサンプリングの権利を利用しながら、リミックスの才能を存分に発揮できる絶好の機会といえる。

 「サンプリングは犯罪行為ではなく創造的な行為だという考えに、私は全面的に同意する」とJeremy Rosierは言う。英国のトロウブリッジに住むこの32歳のミュージシャンは、「音楽のサンプル利用に関しては時に偏執的なところがあり、私はそういうところが大嫌いだ・・・よくできた楽曲を誰か他の人間から盗むのでない限り、サンプリングを行う権利は大切だ」と述べている。

 そして、Rosierは何か正しいことをしているに違いない。プロデューサーのHank ShockleeとDJ Qbertのインタビューの一部を使った、彼の「Both Sides」というキャッチーな楽曲は、現在同コンテストへの応募作のなかで最も高い評価を得た作品の1つとなっている。

 一方、Tre Petersonは、Copyright Criminalsのコンテストに惹かれた理由について、自分の作品のなかにはヒップホップにルーツを持つものが多いからだと説明した。アトランタ在住の29歳になるこのミュージシャンは、「ヒップホップの核心部分の起源は、他人の音を利用することにある。芸術とは本来そういうものだ。他者のつくったものを、ある程度までは自由に利用できる」と述べている。

 McLeodは、プロのミュージシャンが他者の楽曲のサンプリングしようとした場合、弁護士を通じて許可を得ることが法律で求められているような現況に憤りを感じている。

 そうした点が「ヒップホップとヒップホップのサンプリングの成長を妨げている」とMcLeodは言う。「ヒップホップの黄金時代は約15年前に終わった。10万ドルも払って他者の音楽をサンプリングしているのはKanye Westくらいなものだ。De La SoulやPublic Enemyは、もっと自由な形式のサンプリングを行っている」(McLeod)

 このコンテストに関わる人間のなかには、他者の作品を下敷きにして合法的に作品をつくれることはいいことだというメッセージを広めたいと考えている者もいる。そして、Creative Commonsのライセンスを利用しながらこのコンテストを行うことで、著作権の対象となる他のすべての表現と同じように音楽も扱われるべきだという考えが明確になる。

 「このドキュメンタリー映画の製作に打ち込んでいる人間全員が、他者の作品を利用/再利用することは文化的な会話や文化的な世界にメリットをもたらすものであるという考えを理解していると私は思う」と、Creative Commonsのクリエイティブディレクター、Eric Steuerは言う。「われわれは、そうした人々は全員この考えを受け入れるだろうということ、そして1人残らず自分の作品でサンプリングを行っているということを知っている。(そのため)彼らは、自分の作品がサンプリングに使われたり再利用されるという考えを拒んでいない」(Steuer)

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