フラクタルがファッションに出会う
はんだごてやワイヤーカッター、フラクタルといったものは、華やかなファッションの世界とは無縁の存在だと思われがちだが、ギークに自己表現の発露としてファッションを受け入れさせたいと考えているEngは、この2つを相容れないものとは見なしていない。
「ファッションは、他者に対して自分を伝える最も簡単な方法だと思う。誰かに会った時、まず最初に気づくのはその人の外見だ。この外見というのは、結局洋服の着こなし方やスタイルということになる」(Eng)
テクノロジーの影響を受けてデザインされたEngの服は、現在試作品の段階にあるため、彼女はハードディスク兼用のオーバーオールを着ることよりも、ジーンズにTシャツ姿でいることのほうがはるかに多い。彼女は資金不足のために、十分な耐久力のある布地やいまよりも小型の電子機器など、もっと着やすい洋服をつくるのに必要なものが手に入らないという。
それでもEngは、自分のデザインするような服が将来普及することを期待している。
「部品がどんどん安くなっていくので、こうした洋服がもっといろいろな場所に出回るのは間違いない」とEngは予測する。「ボタンと同じサイズのカメラがあれば、それをシャツにつけてこっそり写真を撮るようになると思う。あるいは、そういうカメラで日々の記録を残すという手もある」(Eng)
ParsonsのGunnも、Engや彼女のようなデザイナーが思い描く服が将来出現するとみているが、しかしそれらの洋服にはデザイン上のハードルもあると述べている。
「デザイナーにとって問題なのは、見ための良さと着心地の良さについて顧客が妥協したがらないということだ」とGunn。「携帯電話を上着の胸ポケットにしまっておくなら、見えないほうがいいと顧客は考える。そのため、技術を本当にシームレスなものにすることがデザイナーの課題となる」(Gunn)
デザイナーとしてのEngにとって、着用可能であること以上に余分な機能や装飾を強調したいという衝動を抑えることが具体的な課題になると、とGunnは指摘する。
「Dianaの強みはコンセプトの素晴らしさだが、この強みは同時に弱点でもある。そのおかげで予期せぬ素晴らしい成果を上げる可能性もあるが、新奇なアイディアにとらわれ過ぎて脱線する可能性もある」(Gunn)
Engは、Project RunwayでGunnがくれたアドバイスのおかげで、革新的な技術と使い勝手の交わる部分に目を向けるようになったという。この目標にむけて、彼女はProject Runwayで新たに学んだ教訓を吸収したり、大学院への進学を考えたり、さらにある大きな夢を思い描いたりしている。その夢とは、崇拝するSteve Jobsのために洋服をデザインすることだ。Apple ComputerのCEOは、iPodのような製品を通してテクノロジーをよりユーザフレンドリーなものにしたというのが崇拝の理由だ。
「Steve Jobsのために、テクノロジーや数学、科学のさまざまな要素を盛り込んだ洋服をデザインするのはとても楽しいことだと思う。私のデザインする洋服なら、Jobsももっと上手に自分を表現できるだろう」(Eng)
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