アップルによる映像配信の可能性を検証する - (page 2)

John Borland(CNET News.com)2005年08月22日 17時41分

 Appleは、ソフトウェアの分野に関してこれまでにない進歩を遂げている。5月に新しいiTunesを投入した時点で、ミュージックビデオを提供していたのはGorillaz、Morcheeba、Dave Matthews Band、そしてThievery Corporationの4組のバンドだけだったが、この数はその後増加している。

 これらのミュージックビデオは、多くの場合アルバム購入時に1ドル足すと付いてくるものだ。いずれも11ドル99セントで販売されているBilly Corganの「TheFutureEmbrace」、Coldplayの「X and Y」、そしてMissy Elliotの「The Cookbook」などは、そうした例にあたる。

 Timecode Entertainmentのミュージックビデオエディター、Chris Simsは、「そのほか、CDに付かないものなら何でもいける。この手法を選択肢の1つとして考えているアーチストはかなり多い」と述べている。

 Appleは、何年も前からQuickTimeサイトで映画の予告編を提供していたが、iTMSでのプロモーションも改善してきている。iTunesの映画予告編ページには、新作映画に加えてDVDの映像もある。さらにこのページでは、17社の主要映画会社がアルファベット順で一覧され、映画会社毎に予告編へのリンクが用意されている。

 ムービークリップは無償だが、予告編のページでは映画のサウンドトラックやオーディオブックの販売も行われている。映画、サウンドトラック、書籍のクロスプロモーションは、エンターテインメント業界のマーケティングにとって理想的な形だ。

 Steven Spielbergが監督した「宇宙戦争」の予告編を見てサウンドトラックを9ドル99セントで購入すると、「スタートレック」のキャストによるH.G. Wellsの原作オーディオブックが12ドル95セントで買える、という販売手法は、iTMSだけにしかない存在しない。そして、ビジネス上の課題を克服できると仮定した場合、次は映画そのものを扱うというのが自然な流れだろう。

 Appleのビデオ関連プランのなかでも、ハードウェアの方はさらに厄介だ。多くのアナリストは、Appleがビデオ対応iPodをリリースすると推測している。インタビューをした人々によると、iTunesがミュージックビデオをサポートしたことはこの裏付けになるかもしれないが、それでも映画の完全版配信サービスの土台になる可能性は低いという。

 Jobsはこれまで、ビデオ対応iPodの話を一蹴してきた。同氏は昨年、「ビデオ再生のような機能の実現が最優先課題だという話が多いようだ。しかし、映画を観ながらでは車を運転できないだろう」と語っていた。

 しかし、ソニーのPlayStation Portable(PSP)の人気と画質を見て、Appleも対応を余儀なくされるかもしれない。情報筋によると、Appleは研究室で携帯ビデオプレイヤーのプロトタイプを検討しており、また今後投入するiPodを、長編映画は無理でもミュージックビデオの再生には対応させる可能性があるという。

 業界幹部のなかには、Appleがビデオ分野進出の第1歩として、Macをホームメディアプレイヤーに変身させる可能性があると言う者もいる。

 WebTVの共同創業者で、Apple在籍時にエンジニアとしてQuickTimeの立ち上げに携わったSteve Perlmanは、「ホームメディアプレイヤーという形が最適だろう。ビデオは2時間座って鑑賞するものだ。これは技術で変えられることではない」と語っている。

 Appleが今年はじめにMac Miniをリリースしたことは、彼らの考えを肯定するものだ。Mac miniの外観や機能は、ノートPCやデスクトップというより、むしろマルチメディアPCに近く、テレビの横に置けるほど小さいため、テレビと接続してミュージックビデオや映画を再生することが可能だ。

 TigerがHD(高品位)ビデオをサポートするため、より高速なプロセッサを搭載したMac MiniをHD TVと接続すれば、HDビデオの再生ができる。またハードディスクを大容量化すれば、保存できるビデオの数も増える。

 AirMac Expressが楽曲をストリーム再生するように、ワイヤレスでビデオをストリーム再生する機器の開発も考えられる。

 ビデオ信号を処理する同様の機器を開発することは可能だ。Intelのバイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)、Kevin Corbettによると、LGはすでにデジタルビデオアダプタを製造しており、ほかのメーカー各社も同様の製品をまもなくリリースするという。CorbettはAppleの計画についてはコメントを控えた。

 AppleがIntel製チップを自社のコンピュータに採用することに合意したことで、Macをホームメディアセンターにする道が開けた。Intelは高速プロセッサのほかに、Grantsdaleのようなデジタルホーム専用のコンパニオンチップセットも製造しているからだ。

 Jobsはその発表後、Intelを採用するメリットについて遠回しながら次のように語っていた。

 「数年以内に顧客のために作りたいと考えるものすごい製品のイメージがいくつかある。1〜2年後を考えた場合、Intelのプロセッサロードマップがどのベンダーよりもわれわれの方向性に合致している」(Jobs)

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