グーグルの抱えるプライバシーのジレンマ - (page 2)

Elinor Mills(CNET News.com)2005年07月20日 18時24分

 Googleのプライバシーポリシーによると、ユーザーがGoogleへの登録時やサービスを利用する際に入力した個人情報は、社外の人間と共有されることはなく、マーケティング目的で利用されることもないという。ただし、ユーザー本人の同意を得た場合や、外部の「信頼のおける」団体が情報を求めた場合は例外となる。

 Googleのデータ保存に関する懸念は、同社が2004年8月に株式を公開して以来、いっそう痛切な問題になっている。「邪悪なことは一切しない」という同社のモットーはいまだに残っているが、一部の人々は、果たしてGoogleに、ユーザーのプライバシーを守る重荷と、ますます大きな儲けが得られるターゲット広告のために、これらのデータを混ぜ合わせ分析することへの誘惑との間で、十分なバランスを保つ力があるかどうかを疑問視している。

 「Googleは善良な企業市民として一般から高い評価を得ているが、過去の実績が将来の振る舞いを保証するわけではない。特に、株式公開後のGoogleには、株主の利益を最大化させる法律的な責務があるため、尚更バランスを保つことが難しくなる」と、Hoofnagleは3月にカリフォルニア州の上院法務委員会で行った証言のなかでそう語った。同委員会はこのとき、電子メールスキャニングがプライバシーに与えるリスクについて聴聞会を開いていた。

 Googleは、ユーザーのデータを使って将来何をし、何をしないかについて約束することはできず、またこの情報をどう使うかについて明確に述べることもできない。しかし同社の幹部らは、ユーザーの心配を鎮めるには同社の掲げるプライバシーポリシーで十分だと考えている。

 Googleのプライバシーポリシーには、「ユーザーにシームレスなエクスペリエンスを提供し、自社の各サービスの品質を改善するために」、Googelのアカウントサービスの下で提出された情報をすべてのサービスで共有する場合もある、と書かれている。これがどういうことを意味するかについて、Google関係者が詳しく語ることはないだろう。

 これに対し、Yahooのプライバシーポリシーには、同社が「ユーザーに関する手持ちの情報とビジネスパートナーや他の企業から提供された情報とを組み合わせて使う」可能性があり、しかも同社はユーザーが目にする広告やコンテンツをカスタマイズしたり、ユーザーに連絡を取ったり、または調査の実施やサービス改善といった目的で、このデータを利用したりすると明記されている。

 Googleはまた、他のすべての企業と同じく、捜査令状や召喚状のような法的命令にも従わなくてはならない。

 「無制限にデータを保存できるという見通しは、警察にとって蜂蜜ツボのようなものだろう」とHoofnagleは先の議会での証言のなかで述べていた。加えて、受信から180日以上経過した電子メールには、それ以前に削除された電子メールほど強力な警察に対する保護を受けられない。

ユーザーの不安を認識するグーグル

 Wongによると、Googleは自社のユーザーのプライバシー保護について、大いに懸念しているという。「われわれは、各製品の設計段階から立ち上げ以降まで、プライバシーの問題を非常に深刻に捉えている」と同氏は述べ、そのなかには新製品にプライバシー保護のオプションを組み込むことも含まれているとした。Googleにはユーザーのプライバシーを担当する責任者はいないが、プライバシーの問題解決については、同氏および同氏と協力する弁護士のチームが取り組んでいるという。

 Googleの幹部らは、同社がどうやってデータを保護しているかや、そのデータを暗号化しているかどうかなどの詳細を語らない。同社のプライバシーポリシーには、Googleが適切なセキュリティ手段を講じてこれらのデータを保護し、不正なアクセスや、不正な内容変更、開示、あるいはデータの破壊から個人情報を保護すると共に、個人の身元が特定できる情報については、「サービスの運営や開発、改善のためにこれらの情報を必要とする」従業員だけしかアクセスできないように制限をかけると記されている。

 しかし、たとえGoogleの意図が善意に基づくものだとしても、このデータが結局悪用されることは起こり得ると、Bankstonは指摘する。

 「邪悪なことはしないというモットーは素晴らしいと思うが、喜ばせる必要のある株主を抱え、可能な限り多くの情報を集める経済的な動機付けを持つ公開企業にとって、この信条を遵守するのは難しいと思う」とBankstonは言う。「私は、こうした情報を集めること自体が邪悪だと言っているのではない。彼らにとって、ユーザーの個人情報を集めることは危険だと言っているのだ」(Bankston)

 Googleの個人情報収集に対して、これまでで最も大きな抗議の声が上がったのは、同社がGmailを始めた時のことだった。2004年4月に始まったGmailは、現在2Gバイトという大量のストレージスペースをユーザーに無料で提供しており、文脈に合わせた広告を表示させるためにメッセージの中身をスキャンしている。

 Gmailのユーザーはメッセージを削除することが可能だが、そのプロセスは直感的にできるものではない。メッセージを削除するにはいくつかのステップを踏む必要があり、またそのメッセージのコピーが保存されている可能性のあるGoogleのすべてのサーバから削除されるまでしばらく時間がかかる。だが、具体的にどれくらいの時間がかかるかは、確定していないと、Wongは言う。

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