フルブラウザ戦争が勃発--デファクトを狙うアプリ事業者の戦い - (page 2)

永井美智子(編集部)2005年07月06日 21時33分

3つのビジネスモデル

 現在フルブラウザアプリを提供している企業の収益源は、大きく3つに分けられる。(1)ユーザーが支払うアプリの利用料金、(2)広告掲載・アフィリエイトによる収入、(3)ソフトウェアのライセンス販売だ。事業者の戦略によって、どこに主軸を置くかが異なっている。

表1.ブラウザアプリの比較(数字は2005年7月時点、編集部調べ)
jigブラウザ Scope サイト
スニーカー
ibisBrowser
利用料金 月額1050円/年額6000円(無料版もある) 無料 無料 無料
リリース時期 2004年10月 2005年1月 2005年4月 2005年6月
ダウンロード数 約2万件
(有料会員数)
約19万件(2005年1月21日時点) 約6万件 約5万件
開発元 jig.jp プログラマーズファクトリ ユビキタスエンターテインメント アイビス
開発元の創業時期 2003年5月 2001年8月 2003年8月 2000年5月
主な収益源 ユーザーからの利用料金 広告
アフィリエイト
ライセンス販売
広告
ライセンス販売
ライセンス販売

有料アプリにこだわる--jigブラウザ

 まず、ユーザーからの利用料金を収益の柱としているのがjig.jpだ。同社のjigブラウザの利用料金は月額1050円または年間一括で6000円となっている。一般的なJavaアプリの利用料金が月額315〜525円であることを考えると高額だが、「地図や乗換案内、ニュースなど月額315円のアプリを4つ契約するより安い」(jig.jp取締役の岸周平氏)ということもあり、課金ユーザー数は着実に伸びている。 2004年10月にサービスを開始し、2005年6月には有料会員数が2万件を突破した。

「ユーザーのニーズに応えるアプリの開発に注力する」と話す福野氏

 他社のフルブラウザアプリに比べて機能が豊富な点が特徴で、RSSリーダーや通信料金の概算表示機能などを備えている。PCとの連携にも力を入れており、PC用ブラウザのブックマークをインポートする機能や、jigブラウザで編集したブックマークをPC用ブラウザの「Sleipnir2」にエクスポートする機能もある(関連記事)。

 6月には機能制限のある無料版「jigブラウザFREE」の提供も開始したが、あくまでもjigブラウザのお試し版という位置付けだ。無料版を始めたのは無料のブラウザアプリが増えてきたためだという。「他社にユーザーを取られるよりも、自社で無料版を展開したほうがいいと考えた」(jig.jp代表取締役社長の福野泰介氏)。jigブラウザFREEのダウンロード数はリリースから1週間で2万件程度だが、「有料版は友人に勧めにくくても、無料版なら口コミで広まるのではないか」と期待を寄せている。

 福野氏によれば、無料版に広告を掲載する予定はないという。また、jigブラウザのライセンスを他社に販売する計画もないようだ。jig.jpは現在インフォシークなど多くの企業とパートナー関係を結んでカスタマイズ版を提供しているが、これはライセンスを販売しているのではなく、jigブラウザをパートナーが販売する見返りにトップページをカスタマイズ版をパートナー企業のサイトにするというもの。jig.jpではjigブラウザの販売促進の一環と位置付けている。 「BtoBのビジネスは営業などの人員が大幅に必要になる。それよりも、ユーザーのためのソフトウェア開発に人員を割きたい」(福野氏)

 今後はjigブラウザの機能強化を進めて有料会員数を伸ばすとともに、スケジューラーなどのPIM(Personal Information Manager)アプリケーションにjigブラウザのモジュールを組み込むことを計画している。例えばスケジュールに訪問先の企業のURLを書き込んでおき、クリックすれば直接そのサイトに載っているアクセスマップが見られるといったイメージだ。このような有料アプリのラインアップを増やすことで、事業の拡大を狙っている。

広告、アフィリエイト、ライセンス販売の3本柱--Scope

 これに対して、後発のブラウザアプリはすべて無料モデルを採用している。jigブラウザとの差別化を図るとともに、まずは多くのユーザーを獲得してデファクトスタンダードの地位を獲得する狙いがあるようだ。jig.jp以外の企業は開発中の段階でブラウザアプリをリリースしており、ユーザーが要望を専用ブログや掲示板などに書き込めるようにすることで、ユーザーを開発に巻き込むスタイルを採用している。

小林氏(中央)によると「Scopeは表示処理の90%をアプリ側で行っている点で他社と設計思想が異なる」という

 Scopeを展開するプログラマーズファクトリは、広告、アフィリエイト、ソフトウェアのライセンス販売の3つを主な収益源としている。それぞれに強みを持つ企業と独占契約を結んで、パートナーと共同で展開する点が特徴だ。

 まず広告はインタースパイアと提携した。Scopeを起動した時に最初に現れるトップページの広告を同社が独占的に販売する。アフィリエイトに関してはリンクシェアと組み、Scopeがアフィリエイトサイトとなる。具体的にはScopeのトップページにリンクシェアから提供されたECサイトへのリンクを掲載する。この広告がクリックされたり、広告を通じて商品が売れたりした場合に、一定の報酬がプログラマーズファクトリに支払われる仕組みだ。

 Scopeのライセンスはエキサイトに対して独占提供している。エキサイトは7月下旬にエキサイト版Scopeを同社のサイトから提供する予定で、Scope向けのコンテンツやサービスを展開する計画もある。「いずれのモデルも、ユーザーが増えるにしたがって収益が伸びる仕組みになっている」とプログラマーズファクトリ代表取締役社長の小林将之氏は自信を見せる。

 小林氏によれば、Scopeも開発当初は有料化を視野に入れていたという。フルブラウザアプリの開発は2004年から始めており、当初は2004年10月にリリースする計画だった。しかしjigブラウザの登場で計画の変更を余儀なくされた。「jigブラウザと自社開発のブラウザを比べると、自社のほうが表示速度が遅かったのでリリースを断念した。開発当初はいずれ有料にすることも考えていたが、jigブラウザに対抗するためScopeは無料とすることに決めた」(小林氏)

 同社はScopeのダウンロード数について最新の数字を公表していないが、1月21日時点で約19万件のダウンロードがあったとしている。

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