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インターネットの精神を守る戦い
あまり世間の注目を集めていないようだが、インターネットの中核部分をめぐって今、激論が交わされている。
国連と国際電気通信連合(International Telecommunications Union:ITU)が、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)からインターネットのドメイン名、DNS、IPアドレスの管理権限を奪い取ろうとしている。この争いは、国連が主催する「World Summit on the Information Society」とITUが率いる「Working Group on Internet Governance」を舞台に繰り広げられている。
インターネット自体は、簡単にいうと、一連のプロトコルを使用することに同意するネットワークの寄せ集めだが、その中核部分では権威のある単一のルートに依存している。この仕組みによって、ネットユーザーーがたとえば「www.news.com」とブラウザのURL欄に打ち込むと、意図したウェブページに確実に到達できるようになっている。インターネットを維持する上でドメイン名とIPアドレスの一意性は不可欠だが、これがわずかでも崩れるようなことがあれば、IPアドレスの衝突が起こり、インターネットは混乱に陥るだろう。電子メールでも事情は同じである。受信者の識別子(メールアドレス)の一意性が保証されていなければ、送信者はメールを安心して利用できない。
国連にもITUにも、ICANNからドメイン名とIPアドレスの管理権を奪おうとするそれぞれの理由がある。国連にとって、ICANNは国家という枠を超えた組織であり、国家の域を超えて世界レベルで対処するのが最も適切な問題に対応するための1つのモデルになる可能性がある。
ITUにとって、インターネットの中核部分の管理権を掌握することは、野放し状態にあるインターネットを管理下に置き、IPネットワークの世界との関わりを深める機会となる。ITUは、自らを従来の回線交換ネットワークだけの監視役ではなく、インターネットを含めたすべてのネットワークの監視役であると見なしている。
ICANNは、確かに欠陥もあるが、独自の重要な特性も備えており、なかでも次の2つは注目に値する。
第1に、ICANNの統治形態は明示的に、政策、技術、経営、ユーザーに関する利害を含むものになっている。各利益グループは、意思決定と統治の両面で正式な役割を持ち、意見を言う権利を与えられている。各グループは、一連の意思決定に深く関わっており、それぞれがICANNの重要な構成員になっている(もちろん、ユーザーからの声にもっと耳を傾ける必要があることは分かっている。筆者は、ICANNの意思決定プロセスに積極的に参加する者として、また2005年のICANN指名委員会のメンバーの1人として、その目標に向かって努力を続けるつもりだ)。このように、各グループのさまざまな利害を意思決定プロセスに明示的に組み入れているため、他の統治形態で見られるような組織の堕落(選挙資金の調達などはその最たる例)を回避できる。
第2は、ICANNが真にグローバルな組織であるという点だ。グローバルであると言ったのは、参加している個人がそれぞれ上記のいずれかの利益を代表しており、一国の政府を代表しているわけではないという意味である。これは、インターネットが真にグローバルなリソースであるという点で非常に重要な概念だが、同時に最大の難題を作り出す要因にもなっている。いまのところ、ドメイン名とIPアドレスのようなグローバルなリソースを管理するモデルはない。国際的なリソースを管理するモデル(各国間で共同管理されているリソース)はいくらでもあるが、ドメイン名とIPアドレスはその種のリソースとは異なる。
ICANNは、「大ざっぱなコンセンサス」によって機能するという点でインターネットに似ている。チェックアンドバランス(抑制と均衡)が組織全体で機能している。この5年間でドメイン名の価格が50〜70%も下落したにもかかわらず、サービスレベルが大幅に向上したのもそのためだ。Uniform Domain Name Dispute Resolution Process(統一ドメイン名紛争解決プロセス)によって企業商標の不正占拠などを排除できたのも同じ理由による。
World Summit on Information Society(WSIS)には、キューバ、中国、イラン、サウジアラビア、ジンバブエ、チュニジア、パキスタン、ロシア、エジプトなど、40カ国の代表が参加している。国連がドメイン名とIPアドレスを管理することになったら、各国のインターネット検閲機能が大幅に強化されるだろう。同時に、他の無関係なプロジェクトの資金を調達するために、インターネットに対する課税や規制強化が実施されるだろう。
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