コモディティ化の彼方に--IT業界を待ち受ける「明るい未来」 - (page 2)

Jonathan Schwartz2005年03月23日 17時48分

 IT産業は現在この「標準化」の段階にある。チップ、オペレーティングシステム、ネットワークプロトコルといった標準は策定された。それによって、コンピューティングの大量販売が可能となった。しかし、ITはユーザ側から見ると、現在でも極めてコストが高い上、高度な専門知識がないと利用できない。特に大企業のデータセンターではその点が顕著である。

 電力が、価格の透明性と信頼できるサービス品質を備えたコモディティとみなされるようになったのは、第3段階--すなわち「ユーティリティ化」の段階に入ってからである。この段階になってようやく電気のもたらす恩恵が世界中に行き渡った。そして、電力が個別化段階から標準化段階、さらにはユーティリティ化段階に移行するのに合わせて、2つの変化--すなわち、遍在性の向上と大幅なコストの低下が起こった。電球や工業用モーターだけでなく、電気で動くあらゆるものが発明され、すべての人々に電気の本当の価値がもたらされた。

 1930年までに、米国では中規模都市でも電気の普及率がほぼ100%に達した。1910年から1940年の間に、電力がコモディティとして普及したおかげで、米国の生産性は300%増加し、以前には思いもつかなかったような産業が莫大な富を生み出すようになった。

 IT産業はまだまだ成熟期には達していない。ようやくいまユーティリティ化の初期段階に入ったところである。もう少し経てば、ネットワーク帯域幅とコンピュータの処理能力が、ユーティリティとして、必要なときに必要な場所で利用できるようになるだろう。

 しかし電気の場合もそうだったように、コンピュータの処理能力を販売するためには、その単位を定義し価格を設定するための仕組みを考え出す必要がある。信頼性が高く安全な配送メカニズムも必要になるだろう。さらに、かつてコモディティ化された電気を利用する電気アイロン、洗濯機、温水器などが発明されたのと同じように、コモディティとしてのコンピュータ処理能力を消費者にとって本当に価値あるものに変える製品を発明する必要がある。 そしてわれわれは、そうしたサービスの利用者として、IT技術が企業と家庭で果たす役割をもう1度新たな視点で見直す必要がある。

 その結果、ネットワーク経由で提供可能な価値あるサービスの導入と拡大が急速に進むことになる。たとえば、Goolgeは広範な検索機能を提供しているが、これらの機能はパーソナル化が進み、さまざまなデバイスからも利用可能になるにつれて、その価値が高まっている。

 また、Salesforce.comではコモディティとなった帯域幅を利用することで、競合他社と同等の顧客関係管理サービスを他社よりはるかに安い価格で提供している。

 しかし、これはほんの始まりに過ぎない。かつて、電球が単に独創的なアイデアが結実したものではなく、革命の始まりであると認識した人たちには、明るい未来が待っていた。同じように、どこにいても手頃なコストで入手可能になった帯域幅を利用して、革新的なコンテンツやネットワークサービス、製品、独自の価値の高い情報を提供する企業にも明るい未来が待っている。

筆者略歴
Jonathan Schwartz
Sun Microsystems社長兼最高業務責任者

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