コンピューティング分野で進む女性への門戸開放

Ed Frauenheim and Alorie Gilbert (CNET News.com)2005年03月07日 21時21分

 コンピュータサイエンスの世界に入ろうとしたMaribel Gonzalezは、歓迎からはほど遠い仕打ちを受けた。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でコンピュータサイエンスを学んでいた彼女は、最初の1年間を苦しみ抜いた末、結局同プログラムの専攻をあきらめた。6年前のそのときまで、Gonzalezは数学が非常に得意で、コンピュータ関係の仕事に就くを楽しみにしていた。しかし、UCLAでは男性が大半を占めるプログラミングの講義に圧倒されてしまった。結局プログラミングの単位を1つも取ることができなかったGonzalezは、何でも自力で解決しなければならない講義のやり方が自分の肌に合わなかったと話す。

 現在ニューヨークの公立校で教師をしているGonzalezは、「あそこまで必死に勉強して『C』しかとれなかったのは初めてだった。鼻を思い切りへし折られて、恐れをなしてしまった」と回想する。

 現在多くの人々を落胆させている傾向の中心にあるのは、Gonzalezのような話だ。

 全米科学財団(NSF)のデータによると、コンピュータサイエンスの学士号取得者のなかで女性が占める割合は、1985年は37%だったが2001年には28%に落ち込んだという。また、1990年には情報技術専門家の33%が女性だったが、2002年にはこれが26%にまで減少してしまった。自然科学のような関連分野で女性の進出がめざましいことを考えると、この落ち込みは不可解に思える。

 その一方で、コンピュータの分野に女性を呼び戻す取り組みのなかには、効果を挙げつつあると思えるものもある。米国のIT経済を刺激したり、将来の技術開発の方法に男性のバイアスがかかることを防止するためには、さらに多くの女性の活躍が重要だと考えられている。Sun Microsystems Laboratoriesの研究員Radia Perlmanは、「単一文化は、どのようなものであれ好ましくない。異なる角度からものごとを考えられる人が必要だ」と指摘する。

論争に火をつけたハーバード大学総長の差別発言

 ハーバード大学総長のLawrence Summersが先ごろ行った発言をめぐる騒動もあり、IT業界における女性減少の話題は、米国ハイテク業界の将来に対する懸念のなかで最も重要な問題となっている。

 Summersは、1月末に開かれたある会議の席上で、科学や数学の分野で成功する女性が少ないのは、先天的な性差によるものだと示唆する発言を行った。

 Summersは後に正式に謝罪したが、同氏はこの発言で人々の神経を逆なでし、抗議の手紙を数多く受けとることになった。

 男女の脳の間に違いがあることを示唆する研究結果は増えつつあるが、しかし数多くの学者が、女性は生物学的にコンピュータサイエンスの分野で成功しにくい傾向があるとの考え方を受け入れていない。彼らはこの傾向を説明する要因として、コンピュータの操作はオタクな男の仕事だという固定観念などを挙げている。また、コンピュータ業界の仕事につきものの長時間労働も、育児を希望する女性を怖じ気づかせてしまう。

 Center for Children & Technology副所長のCornelia Brunnerは、過去数十年にわたって続いている社会の保守化が、技術は男性のものという枠組の形成に一役買っており、それが技術を社会にプラスもしくはマイナスに働くツールではなく、むしろ強力な「魔法の杖」のように考えられているという。

 「技術をめぐる偏見が、女性の興味を失わせている。技術のとらえられ方がマシン中心になっており、それを使って何ができるかは二の次になっている」(Brunner)

男女の溝を埋める

 IT業界で働く女性の数は少ないが、そんななかでも女性をこの分野に引き寄せ、またすでに働いている女性には励ましを与えるような活動がいくつも生み出されている。

 最近頭角を現してきた最も意欲的なグループの1つが、National Center forWomen and Information Technologyだ。コロラド州立大学ボールダー校を本拠地に活動するこの非営利団体は昨年、4年間で総額325万ドルの補助金をNSFから受け取った。

 このグループの目標は、米国のコンピュータ/IT産業における女性の割合を、現在の約25%から今後20年間で50%まで引き上げることだ。同グループにはすでに20校を超える大学や10数社のハイテク企業、それにガールスカウトなどの非営利団体など、蒼々(そうそう)たるメンバーが参加している。

 もうの1つ焦点は、大学のコンピュータサイエンス課程の改革だが、こちらは弱者を選別するようなカリキュラムのあり方を変え、全員を励まして成功させるような内容にしようとしている。

 カーネギーメロン大学(CMU)はこの分野で草分け的な存在だ。1995年には、 同大学のコンピュータサイエンス学部に入学した女子は学生全体のわずか7%だった。だが、6年前に女子学生誘致を目指す改革を実施した結果、今では女子学生の割合が3分の1近くになった。

 同学部に入学するには、いまでもテストで高得点を取ることが要求され、特に数学ではその傾向が強いが、しかし同校ではプログラミングの経験をあまり重視しくなった。CMUのコンピュータサイエンス教授Lenore Blumによると、通常は、1年生の時点で速習プログラミング講義を受けることで、翌年にはどの学生もほぼレベルに達するという。

 「1990年代はオタクっぽい学生を選んでいた」(Blum)

 Gonzalezの母校であるUCLAでも、コンピュータサイエンスの講義内容の改革に取り組んでいる。UCLAはここ数年、Hewlett- Packard(HP)から補助金を受けながら、電子工学の初級講座を見直し、それまで近寄りがたいところがあった授業を変え、効果的に学べるものにしている。

 現在では、たとえば講義中に質問のある学生が手を挙げる代わりにインスタントメッセージングを使って教授に質問できるようになっている。これは物怖じする学生を手助けするために用意された手段で、質問を受けた講師はクラス全体でこれを討論することも、あとで個別に回答することもできる。

 Gonzalezは、ロサンゼルスの公立高校出身でUCLAのコンピュータサイエンス課程から落後した4人のラテン系女子学生の1人だった当時を振り返りながら、コンピュータに比較的馴染みのない学生を受け入れるプログラムのアイデアを高く評価した。Gonzalezはいま中学校教師として、この分野の基礎に重点を置くことで、新世代の女性技術者を育てようとしている。

 「私の授業では数学と科学に力を入れている」(Gonzalez)

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