PtoP訴訟と米国の未来 - (page 3)

 われわれは、情報が100%デジタル化された世界に住んでいる。現在創出され、交換されている世界中のあらゆるデジタル情報のうち、音楽と映画が占める割合が一体どれくらいになるのか。さらに、それらのうちでハリウッドや大手音楽会社が所有しているものが、どれくらいあるのだろうか。

 あらゆる家庭でパソコンを使用して作成/保存されているホームビデオのことを考えてみてほしい。家族や友人が所有しているすべてのデジタル画像、家庭で作成されるすべての自作の音楽が、一体どれくらいの量になるかを想像してみてほしい。企業が所有しているデータやプレゼンテーション、すべての書籍、ソフトウェア、ニュースレター、新聞、フォーラムの議論、ブログ、ウェブサイト、メールなど、すべてはデジタル形式で作成され保存されている。そのなかで、音楽と映画が占める割合はどのくらいなのだろうか。せいぜい、1%の10分の1くらいではないのか。

 こうしたデジタル情報はすべて、PtoPネットワークによって実現される効率的な配布の恩恵を受けることができる。デジタルデータを交換するすべての個人と企業は、PtoP技術から利益を得ることができる。たとえ、今は普及率も低く使い方がはっきり見えなくても、2年先、5年先も今のままだとは限らない。

 MGM対Grokster訴訟では、すべてのデジタル情報の1%にも満たない一部の映画や音楽をコントロールする50社ほどの企業が、テクノロジー業界の革命をコントールし、われわれ一般市民からそうしたテクノロジーの恩恵を受ける権利を奪おうとしている。Grokster側が敗訴するようなことになれば、デジタル化が可能なありとあらゆるものが規制の対象になる可能性がある。

 ハリウッドや音楽業界に影響を与える可能性があるからというばからしい理由で、どのような革新的テクノロジーが犠牲になり、市場に出る前に消えてしまうのだろうか。今は分からないが、ぞっとする未来図である。

 そして、それは1980年を思い出させる。

 過去25年間で、米国の生産性、創造性、経済は想像を超えて向上した。米国人はそのことを誇りに思っている。なぜなら、天才的な人たちが驚くようなアイデアを出し、それを何も恐れることなく自由に発展させることができたからだ。Groksterが負ければ、こうした自由は奪われ、コンテンツ業界が革新的なテクノロジーの見張り役をおおせつかることになる。1980年がそうであったように、これからも、革新的なひらめきが必要になるとき、何か新しいものによって古い体質からの脱皮が望まれるときが必ずやってくるだろう。そのとき、われわれの内から沸き上がったせっかくの機会をコンテンツ業界に台無しにされてしまうようなことがあってはならない。

 行動を起こそう。地元選出の議員に訴えよう。われわれはコンテンツ業界の権利は尊重するが、技術革新が自由に行われるように保護することのほうがもっと重要なのだ、と。われわれの未来は、革新的なテクノロジーによって一変するかもしれないのだから。

筆者略歴
Mark Cuban
プロバスケットボールチーム、Dallas Mavericksのオーナーで、HDNetの共同創業者。

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