陽はまた昇る--2004年日本(前編) - (page 2)

Michael Kanellos(CNET News.com)2004年12月27日 10時00分

中国からウォルマートまで--ライバルの登場

 それだけではない。中国や台湾の委託製造業者を利用することで、その他の企業も家電市場に参入するようになった。現在ではWal-Mart Stores、Sears, Roebuck and Co.、Westinghouse、そしてBest Buyでも自社ブランドの家電製品を販売している。

 競争力を維持するために、日本企業は海外アウトソーシングなどの手法を採り入れ、外国企業との合併や提携を行った。ソニーや東芝がSamsungと提携したのも、そうした考えがあってのことだ。特に富士通は、Sun MicrosystemsやIntelと共同でサーバを設計し、LinuxメーカーのRed Hatの研究所に技術者を送り込むなど、かなり踏み込んだ提携を進めている。

 プロセッサやメモリチップの生産といった分野では、コストを削減し、工場の建設費を節約するために、多くの企業が長年の競争関係を解消し、新たな同盟関係を結ぶようになった。この結果、日本はこの1年で半導体の設備投資が活発に行われる市場の1つとなっている。

 「大半の企業は事業をアウトソースしなければならなくなった。後戻りできないことは、どの企業も理解している」とDSK AssociatesのコンサルタントDouglas Sparksはいう。

薄型テレビのトップセラー

 今のところ、こうした変化の多くは功を奏しているようだ。液晶テレビとプラズマテレビの市場では、売り上げのトップ5のほとんどを日本企業が占めている。市場調査会社DisplaySearchによれば、これらのテレビに用いられるディスプレイパネルの生産では、シャープと松下電器が市場をリードしているという。松下はこの第2四半期にはじめてSamsungを抜いている。

 しかし別の市場では、日本のハイテク業界は厳しい試練にさらされているようだ。それは日本が大きな成功をおさめてきたデジタルカメラの市場である。調査会社iSuppliによれば、この市場が日本企業の独壇場となっていることは間違いないという。デジタルカメラの出荷数は2003年の4600万台から、今年は5800万〜6200万台に増える見込みだ。トップ5のメーカーはソニー(23%)、キヤノン(22%)、富士写真フイルム(15%)、オリンパス(15%)、そしてニコン(11%)で、この5社が市場の86%を押さえている。

 デジタルカメラは日本で生まれたとiSuppliのアナリスト、Shyam Nagraniはいう。「つまり、日本企業は早い段階からこの製品に取り組むことができた」

 日本は、デジタルカメラに使われているチップなどの部品の製造でも、支配的な地位を占めている。ソニーは画像を捉えるために使われるCCDセンサーの約40%を生産しており、それに松下、東芝、シャープが続く。デジタルカメラに挿入されるフラッシュメモリカードにはNANDという技術が使われているが、東芝は世界第2位のNAND型フラッシュメモリメーカーだ。NANDは東芝が開発した技術なので、他社からのロイヤリティ収入もある。

次の戦場はカメラ付き携帯電話

 しかし、競争は激化している。カメラ付き携帯電話は市場のローエンドを空洞化させ、米国をはじめとする外国製のシリコンセンサーも性能と人気の両面で上り調子にある(韓国ではすでに望遠レンズを搭載した携帯電話が発売中だ)。デジタルカメラの売上高は2002年の100億ドルから、今年は140億ドル以上に増える見込みだが、iSuppliの予測では、2006年には約120億ドルまで下がるという。

 こうした動きに対抗するために、カメラ付き携帯電話の大手と目されるソニーは、シリコンセンサーの自社生産を開始した。新しい3G携帯電話には世界共通の標準が用いられるので、日本企業は海外でも携帯電話を販売できるようになるだろう。

手を組むライバルたち

コスト削減の必要に迫られた企業は、数々の意外な合併、合弁、技術開発協力に踏み切った。下記はその代表的なものだ。

エルピーダメモリ:NECと日立のDRAM部門を統合した合弁会社

ルネサス テクノロジ:日立と三菱のプロセッサ部門を統合した合併会社

スパンション:富士通とAdvanced Micro Devices(AMD)のフラッシュメモリ事業を統合した合弁会社で、経営はAMDが担当

Cellプロセッサ:IBM、ソニー、東芝が共同開発している次世代チップ

Micron Technology:富士通と三菱電機がDRAM事業から撤退したのち、東芝からDRAM事業を買い取ることで、DRAMの生産能力を拡大した。

 同様の動きはDVDプレイヤー市場でも始まっている。この市場はApexなどにより、早い時期からコモディティ化された。このため、日本企業はより高機能なDVDレコーダーを投入することで、他社と差を付けようとしてきた。大量のデータを保存できる新ディスク技術Blu-ray Discに対応したDVDレコーダーもその1つだが、しかし売れ行きはぱっとしない。

 「今後の課題は、値下げ競争にいつまで参加しなければならないかだ」とThe NPD GroupアナリストのStephen Bakerはいう。

 たとえ競争に勝つことができたとしても、安穏に暮らせるとは限らない。そのよい例がパナソニックとJVCの親会社である松下電器だ。

 松下は2001年に大規模な企業改革に着手した。部門を整理統合し、あるいは分離独立させ、製品開発とロジスティクスを合理化した。2002年度(2003年3月末締)の最終損益は1億8700万ドルの赤字だったが、2003年度は4億500万ドルの黒字に転じ、利益は増加傾向にある。しかし、全体の売上高はほとんど変わっておらず、2003年度は前年比1%増の719億ドルだった。この額は、2001年に同社が定めたこの年の売上目標である870億ドルに遠く及ばない。

 一方、同規模の売上高と従業員数(20〜30万人)を持つ数少ない米国のハイテク企業であるIBMは、2003年に売上高891億ドル、純利益79億ドルを記録した。つまり、IBMはほぼ同じ期間に同等の売り上げをあげた企業と比べて、18倍以上も高い純利益をあげたのである。

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