100ドルPC--実現への道はいかに - (page 2)

Windows PC以外の道

 しかし、199ドルでは100ドルPCという目標の半分を達成したに過ぎない。100ドルPC(少なくとも100ドルのWindows PC)でいくらかでも利益を出すことなどできるのだろうか。開発途上国の低所得者層向けに安いPCを提供し、ひいては次世代の巨大コンピュータ市場に進出することを本気で目指すなら、何もマイクロソフト製品を使わずとも安価で簡単な方法がある。

 低価格のコンピュータを普及させ、究極の違法コピー防止を実現したいなら、Larry Ellisonが数年前に提唱したネットワーク・コンピュータの概念を再検討するほうがいい。モニタ、キーボード、ネットワーク接続機能だけを提供し、それ以外の余分な機能は一切削った、小型でディスク無しのアプライアンスという概念をLarry Ellisonが打ち出したのを覚えている人も多いだろう。もちろん、このマシンなら海賊版ソフトを動かすことなどできない。

 ネットワークコンピュータでは、すべてのソフトウェアを、Oracle製のデータベースと通信ソフトウェアが稼働するサーバからダウンロードして使用する。Oracleは、ホスティング業者やISP、政府機関などに、サーバソフトウェアを販売することで利益を上げる計画だった。

 Ellisonは、ハードウェアを製造・販売するNetwork Computer, Inc.という会社まで設立した。しかし、このベンチャー企業は、テレビのセットトップボックスのメーカーに方向転換した後、2003年に追加資金調達に失敗し、消滅してしまった。

 Gateway、Sony、旧Compaq Computerといった企業も、4、5年前に安価なネットサーフィン用のマシンを市場に投入したことがあったが、PCの低価格化が進み、利幅が減少したために、最終的には撤退を余儀なくされた。

 現在はSunが、ネットワークコンピュータの最新の形を提供しようとしている。同社は、中国やその他の途上国向けの低価格コンピュータを実現する手段として、LinuxベースのJava Desktop System(JDS)を売り込んでおり、すでに昨年China Standard Software と、JDSを数百万の消費者に提供する契約を結んだ。同社はインドやイスラエル、日本、韓国、ベトナムといった国々での市場拡大も目論んでいる。

 Sunの最終的な目標は、PC上だけでなく、携帯電話、セットトップボックス、ゲーム機器、自動車など、あらゆるデバイスにJDSを搭載することだ。Oracleのネットワークコンピュータの考え方と同じで、Sunは、サーバ側のソフトウェアとハードウェア、そしてこの仕組み全体をうまく機能させるためにネットワーク事業者が必要とするネットワークインフラを提供することで、大きな利益を上げることができると期待している。

 こういう話をすると、経験から学ばない者は同じ失敗を繰り返すと言う人がいる。今回のSunのケースも、もしかするとそうかもしれない。しかし、Sunの考えているビジネスはエンドユーザにもPCの低価格化という形で利益をもたらす。Sun社長のJonathan Schwartzのウェブログを覗いてみてほしい。彼は100ドルPCどころか、JDSを無償で提供し、サービスプロバイダ側からのみ利益を上げるつもりのようだ。

 どうやら大衆向けの超低価格コンピュータの実現にこれまでになく近づいていることは間違いなさそうだ。というのも、企業向けIT製品の売上げが停滞したままだからだ。マイクロソフトは今後の売上げの伸びを下方修正している。Sunやその他の企業は、自社のマシンを売り込む新しい市場を必要としている。

 アナリストによると、全世界のPCユーザ数は2010年までに現在の約6億6,000万人から10億人に達するという。この新しいユーザの大半は途上国の人々である。

 低価格PCを開発することは決して途上国ユーザへの利他主義の実践などではない。今世紀最大のテクノロジ市場になると目される途上国の市場で足場を固めるための好機なのである。Ballmerは、この巨大市場獲得への挑戦を表明した。誰が、この挑戦を受けて立つのだろうか。

筆者略歴
Mike Ricciuti
CNET News.comのエグゼクティブエディター兼ケンブリッジ(マサチューセッツ州)支局長

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