当世ハイテク球場事情 - (page 3)

　San Francisco Giantsの本拠地であるSBC Parkのスタンド内でも、ラップトップコンピュータがグローブに取って代わることは当分なさそうだ。Giantsのバイスプレジデント兼最高情報責任者（CIO）のBill Schloughによると、今のところ試合中に同チームのWi-Fiサービスにログオンするファンの数は、1試合当たりわずか200人程度だという。

　San Franciscoのあるブロガーグループが今夏、GiantsのWi-Fiサービスを使ってブログへの書き込みを行なった。ウェブログ（ブログ）の先駆けで、最近Googleに買収されたPyra Networksの創設者、Evan Williamsは何枚かの写真を撮影し、それらをウェブに掲載した。一方、WilliamsのゲームメートのNoah Glassがそれらの写真に感想を添えた。

　Glassは「SBC Parkのスタンドに陣取り、Wi-Fiに接続するのはごく自然な、当たり前のことのように感じる」と述べ、さらに「この程度の接続性では、全然最先端とは感じられない。ただ・・・心地よい夏の夕暮れ時で、空には無数の星が瞬いている中、世界とつながっている」と記している。

　それでもGlassは、「我々はやや異質な存在だ。人々は振り返って我々がコンピュータで何をしているのかと不思議そうに見つめている。しかし、いつの日かこれが普通の行動になるだろう」と語る。

　同じサンフランシスコにあるプロフットボールチーム49ersの本拠地は、先ごろMonster Parkと改名されたばかりだが、こちらではスタジアム内でのWi-Fiサービスの訴求力に疑問を投げかける別の兆候が見られる。Wi-Fiサービスは、同スタジアムでハイテクを使って行なわれた最初の実験の１つだったが、49ersが「観客が関心を持たない」との理由でオンラインアクセス計画を打ち切ったのを機に、脇に追いやられた。

　49ersの広報担当Kirk Reynoldsは、「（オンラインアクセス計画は）1997年に開始された。スイート席で実施し、使い方を説明するスタッフも配置したが、観客が全く関心を示さないことがわかった。彼らは試合の観戦に集中したかったのだ」と語り、さらに「最初のシーズン後にこの計画は頓挫した」と付け加えた。

　Reynoldsによると、Monster ParkでWi-Fiサービスの提供を再開する予定はないが、現在同チームが建設の承認取得に取り組んでいる新スタジアムには、導入が検討される可能性もあるという。

　Wi-Fiなどの情報技術はファンに特典を与えるだけでなく、セキュリティ／メンテナンス担当職員の業務を支援したり、観客の整理を能率化するといった効果も期待できる。電子発券サービスはこれまでに数万人のファンが利用している。同サービスにより、ファンはインターネット上でチケットの購入／交換が可能になり、スタジアムなどの入り口にある回転式改札口の混雑が緩和されている。今後各チームは、そのようなサービスが場内の売店にも適用できないかどうかを検討しようとしている。

　「ガーリックフライの売店の前に出来る行列が長すぎると考えている」とSchloughはいう。同氏はさらに、現在多くの最新技術を使って、空腹のファンにもっと素早く食べ物を提供したり、スタジアムへの入退場をより迅速に行なえるようにしようと考えている、と付け加えた。

　Schloughは「RFID（radio frequency identification）はより迅速な取引を促進することから、ファンサービスという点で大変意味がある」と述べ、さらに「我々はバイオメトリクス企業とも予備交渉を行なっているが、（バイオメトリクスは）かなり未来的な技術だ」と語った。

　しかし、ファンの大半はすぐに自分の席からビールやホットドッグを注文できるようになると期待しない方が良い。Schloughによると、重大な運搬上の問題によって客が着席した状態で注文／配達が行なえるサービスが実現不可能となる可能性があり、この点がスタジアムの設計における大きな進展を阻んでいるという。

　「SBC Parkはデリバリーサービスを想定して建設されたわけではない。しかしだからといって、将来建設されるスタジアムが、デリバリーサービスを利用できるように設計されないと決まったわけではない」（Schlough）