ソフトウェアメーカーのみなさんへ--もうその手は通用しないよ

 企業向けアプリケーション・メーカー各社から出された業績発表はいずれも期待はずれに終わった。今年もまたIT業界は、不満が募る夏の到来を憂慮すべき時期に来ているのだろうか。

 答えは「イエス」である。しかし、それは2002年当時のようにIT投資が激減しようとしているからではない。

 この点は、良いニュースだといえる。

 しかし、顧客の声に耳を傾けると、現状に対する不満の大合唱が聞こえてくる。これまで企業向けソフトウェアメーカーが彼らに強いてきたやり方にうんざりした顧客は、とうとう財布の紐を締めることで抵抗の意思表示をするようになった。一方、アプリメーカーらは新たな世界秩序へ向かおうとする圧力に素早く適応しようとして来なかった。だから、両者が対立するのは明らかだ。

 これは悪いニュースだ。以下に、理由を述べよう。

 まるで回転車の中を走り続けるハムスターのように、ひたすらソフトをアップグレードし続けることに人々はうんざりしている。何年か前とは違い、現在では、オープンソースソフトウェアや、Salesforce.comのように、サブスクリプション形式でソフトウェアを提供するサービスプロバイダなどの代替手段が複数存在する。つまり、高額なアップグレードサイクルや面倒な保守契約に縛られない、別の選択肢が(ITディレクターには)ある。これこそまさに、しつこいソフトウェアのセールスマンを撃退するための棍棒代わりになるものだ。

 従来の企業向けソフトウェアプロバイダにとって、ソフトのアップグレードサイクルに対する顧客からの挑戦はいかなるものでも悪いニュースだ。彼らにとっては現状のままの方が都合が良い。実は、この業界には公にできない秘密がある。その秘密とは、多くの場合、顧客は全く新しいCRM(顧客関係管理)やERP(基幹業務)のシステムなど必要としないということだ。本当のことをいうと、顧客の多くは、すでに所有しているソフトさえ使いこなせていないのが実情だろう。

 これまでは、全てこのようなやり方で回ってきたようだが、あいにく顧客側はIT予算が激減している間に、悪い習慣を身に付けてしまった。ライセンス契約や保守契約を結ぶ際に大幅な割引を受けるのが普通になってしまったのだ。半ば自暴自棄になったセールスマンは当時、契約をとるためなら何でもしそうに見えた。そして、IT不況が過ぎた今でも、ソフトウェアセールスマンは相変わらず守勢に立たされている

 このような新しい力関係の下で、顧客はサプライヤーに対し、ライセンスから保守契約に至るまであらゆる契約で割引やサービスを要求している。理由は単純だ。いまだに高額な料金を支払っているのは世間知らずのお人良しだけだからだ。この慣習がどれほど広がっているかは明らかではない。仮に現状に対する不満が大幅に高まれば、企業向けソフトウェアビジネスの核心が揺らぐことになるだろう。

 長年高額の負担を強いられてきただけに、大半の顧客はこの変化を歓迎するだろう。逆に、OracleやSiebelといったソフトウェア企業の経営者にとっては、この変化は逆風となる。セールスマンに年間数十万ドルも支払うような企業には、世界が全く違ったものに見えていることは明らかだ。これらの企業の大半はセールスマンによって設立されたため、ビジネスのあるべき姿についての彼らの前提が問題になることなどありえなかった。「あなたが料金を支払うのは商品が優れているからです。もし壊れたら、さらに追加料金を支払ってください」

 企業の最近の業績発表を見ると、時代の変化が伺える。場外ホームランをかっ飛ばした企業向けソフトウェアサプライヤーは1社もない。業績不振の口実の中には、素晴らしく独創的なものがある。最高だったのは、PeopleSoftの口実だ。同社は予測された業績を達成できなかった理由をOracleのせいにした。

  Oracleの最高経営責任者(CEO)Larry Ellisonが同社にとって頭痛の種だったことは事実かもしれないが、それでも手探りしながら今後の道を捜す企業にしては安易な口実だ。まだJ.D. Edwardsを買収した直後で、現在その過渡期にあることは別として、同社の問題は、安易な言い訳では説明できない、根の深い、広範囲な不安感の現れである。

 中には、これら全ての問題を単発的な懸念、つまり今年の下半期には再び起こることのない一次的な現象だ、ということで片付けてしまう向きもある。しかし、それはあまりに楽観的過ぎる見方だ。仮に最悪のシナリオは回避できても、変化の明確な兆しが見えており、企業向けソフトアプリメーカーは迫りつつある顧客の反乱に対し、何一つ具体策を打ち出せていない。

 遅かれ早かれ、企業向けアプリメーカーは、ユーザーがもはや彼らの思い通りには動かないことに気付くだろう。

筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者

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