e-Japanであなたのビジネスはどう変わるか - (page 2)

　おりしも、e-Japan計画の第一段階（フェーズI）が終了し、昨年夏に発表された「e-Japan戦略II」、さらに先ほど触れた「e-Japan重点計画2004」に代表されるように、e-Japanはインフラ整備の段階を脱し、実際に高度情報通信ネットワーク社会構築に向けての諸制度の整備を行う第二段階（フェーズII）に入りつつある。このタイミングでインタビューを行うことで、e-Japanがこれまで取り組んできたことの成果とその評価、そしてこれから取り組んでいく課題の双方について、分かりやすくお伝えできるのではないかと思う。

　さて、インタビューについては、内閣府のIT担当室を皮切りに、総務省、経済産業省など、e-Japanの施策を実行している代表的な省庁を回っていくことにしているが、基本的なインタビューを行う際の視点として、以下の５点を念頭に置いておきたい。

• よく知られていないe-Japanの実態を明らかにする視点
• IT産業の振興の視点（関連市場の形成・企業活動へのe-Japanの影響）
• タックスペイヤーの視点（国民にどういうメリットが生じるのか）
• 事業の評価（投入される予算額とパフォーマンス）、次の展開について（事業の評価の視点）
• 当該官庁全体の行政の中でのe-Japan、ITのインパクト

e-Japanの先導７分野

　何よりもまず、「この省庁（部署）は、e-Japanで何をやっているのか」という点は必ず押さえておきたい。e-JapanIIでは先導７分野として医療、食、生活、中小企業金融、知、就労・労働、行政サービスが、横断的な基盤整備としてインフラ、セキュリティ、研究開発、人材育成、国際協力の５分野が指定され、具体案となるe-Japan加速化パッケージでは、それらに対応してＡ〜Ｆ（Ａ：国際戦略(Asia)Ｂ：セキュリティ(Block and Back-up Security)Ｃ：コンテンツ政策の推進(Contents)Ｄ：IT規制改革(Deregulation)Ｅ：評価(Evaluation)Ｆ：電子政府・自治体の推進(Friendly e-government and e-local government)）という政策軸が規定され、各政策が列挙されている。

　実際の取材では、それぞれの政策がe-Japanの各政策文書の中でどこに位置づけられているのかを確認しつつ、e-Japanが掲げる目標のどの部分に貢献していくのかについて、意識しながらインタビューを進めたい。

　また、注意しなければならないのが、あまりメディアで取り上げられていない地味な政策ではあるが、IT産業のみならず、経済社会全体に大きなインパクトを持つ施策も含まれているという点だ。この取材では、注目を集める政策はもちろんのこと、出来る限りそのような「隠れた重要政策」にも焦点を当てて紹介していくことにしたい。当然ながら、ITを用いた規制改革という側面を持つe-Japanにおいては、細かい政策が持つ業界全体へのインパクト、新しい市場の開拓という効果も、無視できないものだからだ。

ITを予算獲得の手段にするな

　さて、本連載はe-Japanに対して、無条件で礼賛するつもりはないことも、ここで付け加えておきたい。未曾有の財政危機に直面している我が国の状況で、IT関連予算だけが白紙小切手を用意されているなどということはあり得ない。事実、e-Japanについても、厳しい評価の目が向けられている。単なるITブームに乗っかった、各省庁の予算獲得手段としてのe-Japanであるのなら、その意味合いには疑問符を付けざるを得ない。

　IT戦略本部でも、e-Japan戦略Iの評価を行うべく、評価専門調査会が設置され、今年3月にはe-Japanの評価専門調査会の中間報告書 (概要:PDF)が取りまとめられた。その中でも強調されているのが、利用者の視点に立った成果主義の徹底である。e-Japanでは、従来の政府の取り組みからすると異例なほど、数値目標や実行期限が明確に設定されている。つまり、政策評価に向けての基本的な基盤は予め準備されていると言えるが、報告書で指摘されているとおり、国民が求める成果目標と、行政担当者が目指す施策実施目標が乖離していることが、成果が不十分と判定されていた原因である。