ウェブでの音声/映像検索技術はどこまで進んだか

Stefanie Olsen(CNET News.com)2004年06月14日 10時00分

 Googleの検索で見つかるかどうか、それが運命の分かれ目だ。

 National Public Radio(NPR)のオンラインディレクター、Maria Thomasが今年はじめに、この問題に直面していた。ウェブ関連のビジネスをしている人なら答えは明らかだろう。検索エンジンの検索結果に表示されるか否かは、ビジネスが成功するか、それとも世間に忘れ去られるかの分かれ目と言っても過言ではない。

 しかしThomasの場合は、そう単純にはいかなかった。ウェブを巡回し、あらゆる情報をインデックス化する「検索エンジンスパイダー」の大半は、音声/映像コンテンツの認識が事実上できないため、高い評価を得ているNPRのラジオプログラムを主要な検索エンジンで探しても、検索結果にはほとんど表示されない。

 音声の特徴に着目してファイルをインデックス化する機能は、Googleなどの検索大手でもまだ開発途上の段階だ。そこでNPRは、検索エンジンスパイダーが認識し、ピックアップできるよう、音楽放送を即座にテキストファイルに変換する計画を思い付いた。

 Thomasは、「われわれのサイトでは主に高品質な音声を豊富に扱っており、それがユーザーにとって貴重で役に立つ場合、(検索エンジンで)それを是非発見してもらいたいと考えている」と述べ、さらに「大手検索エンジンの技術では音声/映像の中身までは確認できない。NPRのサイトにも若干のテキストファイルを掲載しているが、それだけではユーザーがわれわれのコンテンツを発見したり、ウェブページを参照するのに、必ずしも十分とは言えない」と語った。

 自宅でインターネットへのブロードバンド接続が可能な消費者の間で、マルチメディア・コンテンツに対する需要が高まっているのに伴い、静的なテキストの世界から動的な映像や音声の分野への勢力拡大を図ろうとしている検索エンジン各社の間で、音声/映像の検索を可能にする技術の開発競争が始まっている。

 こうした技術が完成すれば、検索エンジン各社だけでなく、インターネットを活用し、ウェブ上に溢れる情報の中で自分のサイトを目立たせ、新たな視聴者を呼び込みたいと考えているコンテンツの所有者にとっても、メリットは大きい。新技術の開発競争に勝利した検索エンジンは、消費者が自分の好きなやり方で番組を検索し、好きな時に好きな方法でこれを楽しめるという点が大きな特徴となりつつある、メディア新時代の門番役になれる可能性がある。

 現在、数十万ものウェブサイトへのトラフィックの大半は検索エンジンによって誘導されており、NPR以外にも、これまで複数の企業がうまく検索エンジンに登録してもらおうと必死に取り組んできた。しかし、自社の音声を検索インデックスに組み込むためにゲリラ的戦略を採用した放送局は、恐らくNPRが初めてだろう。今のところ、同社の戦略は見事功を奏している。ここ数週間に、Google NewsやYahoo NewsのインデックスページにNPRの音声がきちんと表示されるようになった。また、悪名高いイラクの「アブ・グライブ捕虜収容所」といったニュース関連キーワードを探しても、これらの番組が検索結果に表示されるようになっている。

 Thomasは具体的なトラフィック数は明かさなかったが、NPRのニュースが大手検索エンジンの検索結果に表示され始めて以来、同社のサイトでは、イラクで人質となった米国人のNick Bergが惨殺された事件など、関心度の高いニュース記事へのアクセス数が記録的な数字に達したという。

不毛な騒ぎや怒り

 インターネットへのブロードバンド接続が消費者の間で一般化しつつあり、それがマルチメディア・コンテンツに対する新たな需要を生み出している時代に、NPRの取り組みはGoogleやYahooが抱える限界を浮き彫りにしている。各パブリッシャーは、オンライン専用の音声や映像を続々と追加し、また教育関連企業は講座をネット上でストリーミング配信している。さらに、各放送局でもデジタル形式の大量のアーカイブをネット上で提供している。小規模な名もないパブリッシャーは、ウェブ上でマルチメディアの作成/演出/提供を行うことが、以前に比べますます低コストになっていることに気付いている。しかし、主要な検索エンジンでは、これらのコンテンツを探し出すことはできない。

 そこに、この隙間を埋めることに特化した専門の検索エンジンのビジネスチャンスが生まれた。すでに、Singingfish、StreamSage、Hewlett-Packard(HP)、Virage, NexidiaといったIT企業が、これらの難問解決に取り組んでおり、その中にはYahooやAOLも含まれている。Yahooは、音声/映像を専門に扱う検索エンジンの老舗の1社であるAltaVistaを所有するが、今のところ同技術を売りにしようとはしていない。またYahooと並んで、音声/映像検索をめぐる競争でダークホース的存在のAmerica Onlineは、今年はじめにSingingfishを買収した。

 Singingfishのゼネラルマネジャー、Karen Howeは「インターネットで入手可能なストリームの数は爆発的に急増している」と述べ、さらに「企業や一般家庭でブロードバンドの導入が急速に進んでいるため、今やユーザーは大した苦労もなく高品質なコンテンツを利用できるようになっている」と語った。現在、Singingfishが1日に処理する検索件数はおよそ600万件で、1月時点の300万件から倍増している。また、新たに登録されるストリームの件数は1日当たりおよそ8万件に達している。

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