脚光を浴びる次世代フレームワーク、サービス指向アーキテクチャ

Martin LaMonica(CNET News.com)2004年04月12日 10時00分

 Rhonda Hockerは3年前、10億ドル規模の売上を誇るソフトウェアメーカーのBEA Systemsで最高情報責任者(CIO)として働き始めた。彼女は当時から、高価なアプリケーションパッケージが成功する見込みは低いと考えていた。

 Hockerが以前勤めていたパソコンメーカーでは、何百万ドルもの資金を費やして、サプライチェーン管理(SCM)やエンタープライズ・リソースプランニング(ERP)、セールスフォース・オートメーションなどの各アプリケーションを導入していた。

 「そうしたアプリケーションを統合しようとしたけれど、なかなかうまくいかず、結局Excelをつかって数百万ドル規模のビジネスを管理していた」(Hocker)

 企業の財務状態や運営状況を把握するためには、高度に統合された情報を利用できることがきわめて重要だが、悲しいことに他の多くの企業でも、Hockerと同じ立場にある者が、自分とおなじような比較的原始的なやり方で、苦労しながらデータを取りまとめとめているのに彼女は気付いた。

 Hockerは、こうした経験を踏まえ、BEAではビジネスニーズによりよく反応できるITを構築することだけにエネルギーを集中させた。彼女は仕入れを一元化するためにITプロセスを改革し、また全社的な技術インフラ構築の取り組みを主導した。そして彼女は、自分の目標を達成するためには、サービス指向アーキテクチャ(SOA)を中心に全社の各システムを再設計しなければならない、という結論に達した。

 Hockerと同様の結論に達する企業がますます増えている。サービス指向アーキテクチャは、より柔軟でコスト効率の高いコンピューティングシステムを構築する設計アプローチとして、大きな期待を集めている。過去3年間にわたって予算削減を続けてきた企業がようやく財布のひもをゆるめ、ITへの投資を再開し始めるなか、技術基盤を再設計し、異なるシステム間の相互運用性を向上させる方法として、SOAを選択する企業がますます増えている。

 SOA自体は製品ではなく、むしろコスト削減や柔軟性の追加といった目標を念頭において、企業のバックエンドシステムの構築や相互リンクを行うためのフレームワークだ。したがって、SOAは都市計画に似たものになる。SOAでは、中央のIT部門が全社共有のインフラサービスを提供する仕組みになっているが、これはちょうど交通信号や、電気やガスなどの公共事業、または道路の修復などを自治体が管理しているのに似ている。SOAはビジネスデータの移動など、企業システムにとって重要な日常のタスクを扱う。たとえば金融機関なら、古いメインフレームに保存されている決済情報を、ビジネスパートナーがアクセスできるようインターネットベースのサービスに移行する、といったことが考えられる。

 ハイテク業界にはすでにたくさんのキャッチフレーズが溢れており、SOAもそうしたものの1つに聞こえるかもしれない。だが、このコンセプトにはITシステムの構築・運営コストを大幅に削減できるとの期待が寄せられている。現在SOAを利用しているのは主に最先端技術を好み、比較的高度な技術を利用している企業だ。しかしSOAがうまく実装されれば、高価なだけで価格に見合う成果を上げられないというITプロジェクトの伝統が崩れ、また企業に対して新たなアプリケーションを迅速にリリースするために手段がもたらされる可能性がある。

 「技術の実装にかかる時間の短縮や、ビジネスニーズへの効果的な対応、さらにはメンテナンスコストの節減など、私の場合はSOAのさまざまなレベルで各種のツールを利用している」というのは、サンディエゴにあるローン会社Accredited Home Lendersでエンタープライズ・アーキテクチャ担当ディレクターを務めるMichael McCoy。同社は以前、情報共有を行う際に、異なるオペレーティングシステム(OS)や開発言語などの技術的問題に悩まされ、ビジネス上の問題解決に専念できずにいたと、McCoyは言う。

 Accredited Home Lendersでは、BEAのWebLogic PlatformとBlue Titanという新興会社のSOAソフトウェアを利用して、全社にさまざまなサービスを提供しているが、そのなかにはビジネスパートナーとインターネット経由でやり取りできるよう、データをXML形式に変換することなども含まれている。同社のシステムでは、Microsoftの.NET環境でもJavaでもアプリケーションを記述でき、また相互の情報共有も行える。アプリケーションサーバと関連ソフトウェアをBEAから、運営ツールをBlue Titankから購入したことにで、ポータルソフトやワークフローソフト、統合ソフトを別々に購入するよりも約25〜30%コストを抑えられたとMcCoyは述べている。

 デスクトップマシンでビジネスアプリケーションを利用しているユーザーは、システムがSOAに移行しても、それを意識することは全くないはずだ。しかしソフトウェアプログラマやシステムアーキテクト、設計者らにとって、SOAへの移行は、異種システムが複雑に絡み合っていることの多い企業の技術インフラの大掛かりな改訂作業となる。

 しかしながら、SOAのコンセプトは特に目新しいものではない。実際のところSOAは、ここ数十年間の既存技術、とくにオブジェクト指向やコンポーネントベースのソフトウェア開発、統合ミドルウェアなどの進化の成果だとアナリストらは述べている。企業は何年も前から、コンポーネントをベースとするモジュール化されたアプリケーションを構築しており、これによって開発者の生産性も向上している。

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