サーチエンジンがブラウザを飛び出した--デスクトップ検索の行方を探る

Stefanie Olsen(CNET News.com)2004年01月26日 10時00分

 大手ポータル企業は今、競争の激しいインターネット検索市場で優位に立つために、ブラウザの枠を飛び出そうとしている。

 消息筋によると、Microsoft、Yahoo、EarthLinkのインターネット大手3社は、うまみのある検索事業をさらに拡大するために、PC画面の端や下部に表示されるタスクバーからオンライン検索が実行できるよう、計画を練っているという。

 タスクバー検索ツールは、すでにブラウザのアドオンとして人気を得ているツールバー検索と似ているが、大きな違いが1つある。タスクバー検索ツールはMicrosoft Windowsのシステムトレイに常駐し、ブラウザやデスクトップで実行されているアプリケーションから独立して検索を実行できるのだ。

 Microsoftが検索の分野に食指をのばしていることを考えると、ライバル企業にとって、デスクトップに居場所を確保することはいっそう重要な意味を持つことになりそうだ。また、タスクバー検索ツールにはブラウザを経由せずに、株価情報や辞書を簡単かつダイレクトに検索できる利点もあると推進派はいう。

 「検索は必要不可欠の機能だ。その使い勝手がぐんと高まるのだから、注目しない者はいない。このツールがあれば、複数のウェブサイトやコンテンツの検索といった、誰もが求める機能やサービスを包括的に提供できるようになる」とEarthLinkのコアソフトウェア担当上級プロダクトマネジャーScott Mecredyはいう。

 検索タスクバーをめぐる動きは、インターネット検索の新たな方向性、つまり「脱ブラウザ化」を示唆している点でも重要だ。

 オンラインとオフラインの境界をあいまいにするXMLなどのデータ標準が登場し、Microsoft Wordのようなごく普通のデスクトップアプリケーションにもウェブに似た機能が搭載されるようになった。そして今度は、インターネット検索がブラウザの枠を飛び出そうとしている。

 調査会社Nielsen/NetRatingsの調べによると、インターネットユーザーの4分の3はブラウザ以外のアプリケーションを使ってウェブにアクセスしているという。必要がなければ、わざわざブラウザを立ち上げなくてもよいのだ。

 Googleは、ブラウザ不要のタスクバー検索ツールを最初に発表した大手検索企業の1つだ。昨年12月にテスト版が公開されたGoogle Deskbarは、デスクトップ上の検索ボックスから辞書や株価、映画のレビューといった情報を検索できるようになっている。

 GoogleはDeskbar以前にも、Internet Explorerのメニューに検索バーを組み込むプラグインを提供している。

次々と出現する検索ツール

 Googleがこうしたツールを公開すると、Yahooなどのライバル企業もすぐに後を追ったと検索の専門家は語る。

 「業界全体が人まねモードに入ったような感覚だ」と業界誌Search Engine Watchの編集者Danny Sullivanはいう。

 GoogleやYahooは新たな成長の場をデスクトップに求めているが、それは強敵Microsoftの思うツボでもある。

 Microsoftはすでにデスクトップ上に検索機能を組み込む準備を進めており、Word、メール、MSNなどの各種アプリケーションとOSの研究に注力している。

 戦いの場であるWindowsはMicrosoftの土俵だ。競合企業にとって、Microsoftの動きは深刻な脅威となる。

 現在、デスクトップ市場はMicrosoftのWindowsとOfficeファミリー(Outlook、Word、Excelなど)で独占されている。Microsoftは競合他社が逆立ちをしてもできないこと、つまりOS、アプリケーション、ウェブのすべてを検索できることを目指している。次期WindowsのLonghornでは、ハードドライブでGoogle風の検索を実行したり、検索結果を分類して、わかりやすく表示したりすることが可能になる。

 情報資源を提供する企業Factivaと提携し、Officeから多彩な情報コンテンツにアクセスできるようにしたのもその一環だ。

 またMicrosoftは、Internet Explorerを武器にブラウザ市場でも独占的な地位を築いている。この地位を利用すれば、ユーザーが意図的に別の検索ツールを選択しない限り、Microsoftの検索テクノロジーをユーザーのデフォルトに設定することができる。また、こうしたやり方は同社が得意とするところでもある。

 インターネット関連アプリケーションの検索機能も強化される予定だ。同社のプロダクトマネジャーLisa Gurryは、年内に新しい検索テクノロジーを発表する計画があることを明らかにした。このテクノロジーはWindows Media Playerなどに搭載される。

 Gurryはさらに、デスクトップ検索アプリケーションは「興味深い開発分野であり、Microsoftが注目しているもの」だと語り、2カ月以内にこの分野に関する報道発表があることをほのめかした。

検索は金のなる木

 アプリケーションメーカーにとって、検索はうまみの多いビジネスだ。検索を実行すると、通常の検索結果と共に、スポンサー付きの検索結果が表示されることがある。アプリケーションメーカーはユーザーが広告リンクをクリックした回数に応じて、広告主から広告料を受け取る。昨年はこの種の広告からの収入が16億ドル(前年比25%以上増)に達し、オンライン広告業界の重要な収益源となった。今では多くのインターネットサービスプロバイダやアプリケーションメーカーが、ユーザーに新しい検索手法を、そして企業に新しい広告手段を提供することで、2004年は20億ドル市場になるといわれるこの成長市場にあやかろうとしている。

 一方、GoogleやYahooは自社の検索ツールをその他のアプリケーションに拡大することで、ウェブ市場での地位を維持しようと懸命だ。GoogleはApple Computerと提携し、同社のブラウザSafariのデフォルト検索エンジンの座を射止めた。Googleは携帯電話市場でも複数の企業とパートナー関係を結んでいる。

 アプリケーション開発に乗り遅れれば、市場競争に取り残される可能性もある。

 「オンラインコマースの世界では、検索の中でも特にショッピング検索技術の重要性が急速に高まっている。検索エンジンやポータル経由で買い物をするユーザーが増えていることを考えると、こうした統合に取り組まない企業は、ユーザーを失う恐れがある」とNielsen/NetRatingsの上級アナリストAbha Bhagatはいう。

 全米第3位のプロバイダであるEarthLinkは、デスクトップとツールバー検索が、競争の激しいプロバイダ市場で生き残る一助になると考えている。Mecredyによれば、同社はすべてのデスクトップ検索プロバイダに対し、会員向け検索サービスの提供について交渉を持ちかけたという。交渉相手は明らかにされていないが、Google、Yahoo、広告ソフトウェアメーカーのWhenU、検索テクノロジー企業のGroxis、Dave’s Quick Search Deskbarなどと考えていいだろう。

 「今年はこの分野で新しい発表があるだろう」とMecredyはいう。

 あるインターネット検索企業の幹部は匿名という条件で、Yahoo傘下のOverture Servicesも、EarthLinkやその他のプロバイダとデスクトップ検索に関する交渉を進めていると語った。

 EarthLinkは交渉の詳細を伏せているが、Mecredyによると提携交渉はすべての大手テクノロジー企業を対象に行われたとのことだ。EarthLinkはすでにポップアップ広告をブロックするツールバーを会員に提供しているが、ここには検索機能は含まれていない。

 Overtureにとって、デスクトップ検索やツールバー検索でEarthLinkと提携することは戦略上の勝利を意味する。Overtureは2002年にEarthLinkが有料検索システムの導入を検討していた際、有料検索ネットワークを拡大しつつあったGoogleに契約を奪われた過去があるからだ。

 アルゴリズム検索と有料検索の分野でGoogleと提携しているEarthLinkは、Googleがデスクトップ検索とツールバーアプリケーションに力を入れていることを「重々承知している」というが、こうしたツールをサードパーティと提携して提供するのか、独自に開発するのかはまだ決定していない。

 Overtureの広報担当者Dina Freemanは、デスクバーとツールバーを「業界の誰もが狙っている分野」と評する。しかし、同社はまだこの分野の新製品を発表していない。

すべてが検索可能に

 昨年、Overtureを約17億ドルで買収したYahooは、検索対象を拡大する意向をすでに明らかにしている。同社のCEO、Terry Semelは先週、ウェブ検索事業の拡大に向けた壮大な計画は「始まったばかり」で、2004年にはYahoo系列のどのサイトでも検索が可能になると語った。

 YahooはすでにInstant Messenger(IM)に検索機能を統合している。同社のIMを使えば、チャットをしながら、同じウィンドウ内で映画のレビューや天気を調べることができる。

 ウェブ検索の結果を視覚的に表示する技術を開発した新興企業のGroxisは、プロバイダやウェブポータルにとってデスクトップ検索の有望なパートナーとなる。Groxisは、Yahoo、MSN、Teomaなど6つの検索エンジンのデータベースを同時に検索し、検索結果をユーザーが理解しやすいカテゴリに分けて、視覚的に表示するデスクトップ検索ソフトを販売している。

 同社のCEO、R.J. Pittmanによれば、このソフトウェアには大手検索企業からも引き合いがあるという。また、同社は他社のブランドでデスクトップ検索アプリケーションを提供することも検討している。つまり、YahooやCitysearch.comといった企業がGroxisのデスクトップ検索ツールをライセンス提供するようになれば、1つのデスクトップソフトウェアから、こうした企業が持つ膨大なサイトのすべてを検索できるようになるかもしれない。

 「これはプロバイダにとって大きなチャンスだ。どのプロバイダも生き残りをかけて、競争優位となる機能を求めているのだから」(Pittman)

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