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マイクロソフトの次のターゲットはグーグルだ

2003/07/07 10:00
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 MicrosoftはそのWindowsの覇権を、検索サイトの王者Googleへ向けて拡大しようとしている。

 先月Microsoftは、MSNBotという新たな検索エンジンをひそかにスタートさせた。MSNBotは、HTMLのリンクと文書のインデックスを収集する機能を持っている。同社はこれまで、Inktomiなどのパートナー会社にエンジンの開発を委託してきたが、MSNBotをパソコンや各種サービス戦略の中心に据えることになれば、Googleに対して十分な脅威となる可能性がある。

 Microsoftは、自社製品の家庭ユーザーと企業ユーザーを結びつける新しい検索技術を構築する計画を進めているが、MSNBotはその実現に向けた最初の技術と見られる。同社幹部は、このMSNBotが最終的には、さまざまなウェブサイトやアプリケーション、および圧倒的なシェアを誇るWindowsとを相互に結びつける技術に発展するだろうと期待している。

 MSNBotは、次バージョンのWindows(開発コード名Longhorn)に搭載される予定の新しいファイル管理技術とMSNポータルとの連携を実現させるだろう。この新しいファイル管理技術は、PCや企業のネットワーク上、あるいはインターネット上に存在する電子メール、表計算のワークシートなど、あらゆる文書を検索しやすくするものだ。

 MSN部門を統括するMicrosoftバイスプレジデントのYusuf Mehdiは、今年5月のGoldman Sachs主催のカンファレンスにて「Googleはエンドユーザーに貴重な経験を与えた。これを見て、我々は基本に立ちかえりさらなる努力を積み重ねなくてはならないと感じている」と述べた。「わが社は納得のいくものを生み出すために多大な投資を行っており、いずれは検索サービスの分野においても最高のものを提供できるだろう」(Mehdi)

 Microsoftのこの動きからいやがおうにも思い出されるのは、以前ブラウザ市場からNetscape Communicationsを追放した時のような同社の容赦ない市場戦略だ。しかしMicrosoftは、これまで軽視してきた市場への遅れを取り戻すためだけにライバル企業を蹴落とそうとしているわけではない。検索サービス分野にGoogleの存在がなかったとしても、Microsoftはこうした戦略をとったことだろう。それは検索サービスが、今後同社のビジネスで重要な役割を担うことになるからだ。

 とはいえ、この検索サービスの市場でもMicrosoftは以前と同様の戦略を取ると考えられる。最も可能性が高いのは、自社の製品やサービスにそうした新技術を取り込み、市場に広める戦術だ。たとえば同社は、自社開発した検索機能やマッピング機能を、Word文書やWindows開発ツールで開発したウェブサイトに直接組み込むことができる。

 Microsoftの最終目標は、同社ブランドの価値を上げることだ。検索機能といった一般的なものから需要を作り出し、競合他社のサービスへのニーズを自社製品に切り替えさせ、顧客をWindowsの世界へ囲い込む。こうした戦略は理論上、顧客のWindows購入意欲の向上や同社サービスへのニーズを高めることにつながるが、その一方でGoogleは検索サービス事業から得ていた売り上げを奪い取られることにもなる。

 「Longhornの仕様が次第に明らかになるにつれ、Longhornに検索サービスが組み込まれるのか、また組み込まれた場合、関連製品にいったいどんな波及効果をもたらすのか、といった懸念が出てくる」と、Jupiter Researchの産業アナリストMichael Gartenbergは言う。「Microsoftはこれまで製品に対して、ユーザーが初期設定のまま使っても十分なものであれば必ずしもべストパフォーマンスでなくてよい、というスタンスを取ってきたからだ」

 検索サービスで先手を打つ戦略は、Windows、MSN、Officeや、サーバ製品といったMicrosoftの主要製品をテコ入れしようという戦略の一つである。その戦略、「Longhorn Wave Innovation」は、ネーミング同様、壮大な使命をおうビジネス戦略の鍵を握るのだ。

検索サービスに新たな旋風が

 Microsoftが検索サービスに注力していることが明らかになったのは、同社が2005年出荷予定のLonghornの概要を策定し始めた1年以上前のことだ。この次期OSでは、PC内に散乱するWord文書、Outlookの電子メール、Excelシート、PDFファイルといった多数のファイルから、簡単なツール1つで検索できるような機能が盛り込まれる予定である。こうしたツールはこれまでPC業界には縁の遠い存在だった。

 「Microsoftのねらいは、ウェブ上での検索とローカルでの検索との違いをほとんど感じさせないようにすることだ」と述べるのは、Guernsey ResearchのアナリストChris LeTocqである。

 Google、Microsoftともこの件に関してコメントは出していないが、Microsoftの幹部Jim Allchinは先ごろThe Seattle Times紙のインタビューの中で「Googleはすばらしい機能を搭載したシステムだ。しかし、私はその将来を悲観視している」と強気な意見を述べた。

 Googleは、これまで多くの企業がMicrosoftの犠牲になってきたのと同じような運命をたどらないために、重大な決断を求められるかもしれない。Microsoftの犠牲となった企業は、主力事業の分野から追い出され、不慣れな事業への転換を余儀なくさせられた。Netscapeが競争に敗れてブラウザ事業からポータル事業へ転換したり、RealNetworksがメディアプレイヤーの分野から有料コンテンツサービス分野へと移行した例はその典型的なものだ。

 「ここで着目すべき点は、Googleがポータルサイトに生まれ変わる可能性はあるのか、ということだろう」と言うのは、Jupiter ResearchのアナリストMatthew Berkだ。「実際のところ、Microsoft、Googleとも明確な答えを持っていない。彼らは新しいマーケットを見つけると、それを追い求める。そして同時進行で多くのことを手がけているのだ」

 MicrosoftのCEO、Steve Ballmerは、先月全社員に配った文書の中で、同社の戦略にとって「検索」がいかに重要かを強調している。BallmerはLonghorn関連の新製品やマーケティング戦略について語るとき、「検索サービスはエンドユーザーに新機能と新サービスを提供する」と明確に述べている。Ballmerの配った文書は「革新の統合」についてのものだったが、その中で彼は、同社が顧客へのサービスや他事業の売り上げを拡大させるためにも、検索サービスを通じてさらなる拡充を目指す必要があると述べている。

 Microsoftが事業の多角化を求められているのは言うまでもない。同社には400億ドル以上ものキャッシュがあるといわれているが、実はそのほとんどをWindowsとOfficeという二大ドル箱製品に頼り切っている。同社は、MSNを収益の取れる消費者向け事業にしようとこれまで何度も努力を続けてきたが、あまりうまくいっているとは言いがたい。しかしMicrosoftは、ポータル事業を成功させるには使い勝手のよい検索サービスが必要不可欠だと信じている。

 キーワード型有料検索サービスは、Googleやそのライバル会社Overture Servicesだけでなく、MSN、America Online、Yahooといったパートナーにとっても大きな利益を生み出す事業となった。Google、Overtureは、スポンサーへのリンクのクリックごとに得られる収益を、そのパートナーであるポータルサイトにも分け与えている。だがGoogleがOvertureより優れているのは、有料検索サービス事業者としての役割と、膨大なトラフィック量にも耐えうる検索エンジンだ。これによりGoogleは高いマージンを得ながら、ポータルサイトを運営するパートナーへの依存度を下げることができる。これはMicrosoftが目指しているモデルでもあるのだ。

収益を向上させるには?

 このようなモデルがもてはやされる理由を示すのが次の数字だ。OvertureはMSN上に露出するかわりに検索サービスの利益をMSNに分配し、同ポータルの最終収益に大きく貢献している。Microsoftはその詳細な数値を明らかにしていないが、その収益はOvertureのYahooに対する貢献度と同程度だとMSN担当幹部は述べている。ちなみにOvertureがYahooにもたらした収益というのは、先の四半期決算ではYahooの売り上げの20%に相当する約5400万ドルであった。

 このような検索サービス企業は有料検索サービスを収益源としつつ、通常の検索機能であるアルゴリズム的サーチで顧客をつなぎとめている。MSNは同社の検索サービスを向上させるため、InktomiやLookSmartといった検索エンジン開発会社と手を結んだが、Yahooが昨年後半にInktomiを買収したため、今後その提携がどのようなものになるかは不明だ。

 「我々は今、そういった技術を自社で開発しようとしている」と、MSNグループのプロダクトマネージャー、Lisa Gurryは先週のインタビューで答えている。

 Microsoftが本当に自社内で開発を行うとすれば、その検索エンジンの存在は間もなく知れ渡るはずだ。これまでブラウザ、メディアプレイヤーなど多数の製品をうまくばらまいてきたように、同社は既存の製品に新製品を搭載してユーザー数やマーケットシェアをほしいままに伸ばすことができるからだ。Microsoftに近い情報筋によれば、同社はMSNの新しい検索エンジン機能を、検索ツールバーとしてIEブラウザに搭載する予定だという。

 これだけのリソースと影響力をもったMicrosoftだが、コンシューマーサービス分野において勝ち抜くまでには至っていない。それどころか、3年前には市場に送り出した話題の製品、.Net My Serviceが失敗し、いまだにその後遺症を引きずっている状況だ。コンシューマー志向型Webサービスとして登場したこのサービスは、その後市場の混乱や賛同する企業が少なかったことなどの理由で棚上げされたままである。

 業界関係者の中には、「Microsoftはこれまで同社の行ってきたインターネット関連のビジネス戦略に多くの誤算があったとようやく気付いたはずだ」と指摘しているものもいる。その誤算は、同社がインターネットの重要性を把握できなかった1990年台前半から続いていた。

 「Microsoftが同じ轍を踏むことはないだろう。インターネット利用の基礎部分をすべておさえ、そしてネット上のビジネスシーン全てにおいてその役割を果たそうとするに違いない」とThe Yankee Groupのアナリスト、Laura Didioは言う。

 「Microsoftは、自分たちが二番手になるなんて許せないと考えているからね」

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