「携帯端末が飽和状態でもワイヤレス半導体市場は伸びる」とガートナーアナリスト

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年09月05日 18時35分

 「ワイヤレス半導体市場の成長は徐々に速度を落としている。2000年以前には50〜100%の伸びを示していたが、2002年〜2007年には約10%にとどまるだろう」。Gartner Dataquestにて半導体市場の調査を担当するチーフアナリストのStan Bruederle氏は、CNET Japanのインタビューに対し、ワイヤレス半導体市場が過熱気味状態から落ち着きを取り戻したと語った。

 Bruederle氏によると、ワイヤレス半導体の成長が落ち着きを見せている理由は、日本や欧米諸国における携帯電話の普及がほぼ飽和状態となっていることが大きな要因だという。中国での成長はまだ期待できるとしているが、「それでも世界全体の伸びが鈍化しているので、中国だけで成長を引き上げることは難しい」と同氏。

 ただBruederle氏は、携帯電話の利用形式が音声からデータ通信に移行していることを指摘する。これは、要求される半導体技術がより複雑で高度なものになることを意味する。携帯電話端末の台数ベースでの出荷の伸びは、2002年〜2007年で6%と予測されているのに対し、同時期の半導体市場の金額ベースの伸びが10%とされていることからも、端末1台あたりの半導体の単価が上昇していることがわかる。

 「今後5年間で携帯電話に新しいテクノロジーが採用される可能性が高いため、ワイヤレス半導体市場は携帯電話の普及が飽和状態となったあとも伸び続ける」とBruederle氏。同氏は、NTTドコモのiモードや、Nokiaのマルチプレイヤー方式でオンラインゲームができる携帯電話を例にあげ、「今後も音声通話以外の機能を持った携帯端末が増えることは間違いないだろう」と語る。

携帯電話以外のワイヤレス市場は?

Gartner Dataquestチーフアナリスト、Stan Bruederle氏

 携帯電話以外でワイヤレス半導体が注目される市場としては、無線LANとBluetoothがある。まず無線LANについてBruederle氏は、無線LAN用チップセットの出荷台数が2003年から2007年の間に4000万台弱から約1億3000万台へと3倍以上の成長を遂げると予測しつつも、金額ベースの伸びは出荷台数ほど伸びないだろうとしている。これは「無線LANが搭載される製品が、PDAなどの一般消費者向けであるため、金額をなるべく抑えなくてはならないからだ」と指摘する。

 現在無線LAN用半導体の出荷台数で大半を占めているのはPC関連だが、Bruederle氏によると2007年にはPC関連用とスマートフォン用(※)の半導体の出荷台数はそれぞれ約6000万台ずつとなり、この2つで市場の大半を占めるようになるという。

※ ここでBruederle氏のいうスマートフォンとは、NTTドコモなどから出ているプロプライエタリな携帯端末ではなく、他社が自由にアプリケーションを開発し、端末上で動かすことができるようなオープンOSを使ったものを指している。

 もうひとつのワイヤレス市場であるBluetoothは、「無線LAN市場より大きい」とBruederle氏。同氏によると、2003年度の無線LAN関連半導体の売上げが3億6000万ドルなのに対し、Bluetoothは4億3300万ドルで、「2007年には20億ドルの市場規模となるだろう」としている。

 しかし同氏は、この予測には懸念事項があることを指摘する。というのも、現在のBluetoothは互換性に乏しく、メーカーが違うデバイス同士でのコミュニケーションが困難だからだ。また、現在Bluetoothの設定方法は複雑で、お互いの機器が認識するために多少の操作が必要となっている点もBruederle氏は指摘している。さらに同氏は、セキュリティに関しても問題があるとし、「Bluetoothのセキュリティは高いとされているが、自分でセキュリティをオンにもオフにもできるので、たとえば企業が従業員に対してセキュリティの高い設定で使うよう指示を出しても、全員がそれを守るとは限らない」という。ただ同氏は、「このような技術面の課題は徐々に改善されてきているので、この懸念事項が解決されれば市場も順調に拡大する」としている。

 無線LANとBluetoothについて語ったあとBruederle氏は、この2つの市場を合わせても携帯電話市場のほんの10%にしか達しないことを指摘した。「ワイヤレス市場において、携帯電話の存在がいかに大きいかということだね」(Bruederle氏)

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