長年のライバル関係に終止符?--ソフトバンクとイー・アクセス、モバイルWiMAXで協業

永井美智子(編集部)2007年06月21日 16時28分

 ソフトバンクとイー・アクセスは6月21日、次世代高速無線通信規格「モバイルWiMAX」の事業化に向けて協業すると発表した。モバイルWiMAX事業を推進する事業会社を共同で設立する計画。このほか、実証実験や市場性の分析、ビジネスモデルの検討、標準化の推進なども共同で行っていく。

 モバイルWiMAXは2007年秋にも総務省が事業者を選定し、免許を交付する計画。総務省は、現在第3世代携帯電話サービスを提供している企業には免許を割り当てない方針で、子会社の場合は出資比率を3分の1以下にするよう求めている。このため、共同会社に対してほかの企業にも出資を募る考えだ。

 モバイルWiMAXの提供事業者は、他社に回線を貸し出すMVNO事業が義務付けられる見通し。このため、インフラの敷設や運用は共同会社が担当し、実際のサービスは両社がそれぞれ提供することを想定している。

ソフトバンクモバイル取締役の宮川潤一氏とイー・アクセス取締役会長の千本倖生氏
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は取締役会のため会見には現れなかった。また、記者から要請されたソフトバンクモバイル取締役の宮川潤一氏(中央)との握手について、千本氏(右)は「握手は苦手」とやんわりと断った

 ソフトバンクとイー・モバイルはADSL事業や携帯電話事業で長年ライバル関係にあった。そんな両社に手を組ませたのは、「モバイルWiMAXは事業化が難しい」という共通認識だ。モバイルWiMAXは新しい技術のため、機器は各社が開発中、もしくは販売を始めたばかりで調達コストが高い。また、品質面でも実際のデータは不足している。

 しかも両社とも携帯電話事業に多額の資金を投資しており、「1000〜2000億円程度の投資は必要」(イー・アクセス取締役会長の千本倖生氏)というモバイルWiMAX事業の費用を1社で負担するのは重い。ここに、総務省の「3分の1ルール」と呼ばれる既存の携帯電話事業者の出資比率に関する方針が示されたことで、両社の協業という道が生まれた。

 事業拡大のためには大きな負担もいとわないソフトバンクと、黒字無借金経営を是とするイー・アクセス。両社の企業文化は大きく違うようにも見えるが、千本氏は「市場にインパクトを与えてきたアントレプレナーいう点で精神的に似ている」と両社の共通点を強調した。

 また、モバイルWiMAXの最大の利点については「高速化が可能なこと」(千本氏)と語り、光ファイバ並みの速度でどこでもブロードバンド通信ができるようにしたいと話した。また、光ファイバの敷設が難しい地方での遠隔医療や遠隔介護、緊急通報システムなどでの利用も想定しているとのことだ。

 今後はほかの通信事業者やコンテンツプロバイダ、金融機関などにも参画を呼びかけ、両社の出資比率が3分の1以下になるようにしていく。「あと2〜3社は参画するのではないか。NTTやKDDI、アッカ・ネットワークスが参画したいというならもちろん歓迎する」(千本氏)

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